2018年度春学期学位授与式 式辞

2018年度 春学期 学位授与式 式辞


今日ここに、2018年度春学期、桜美林大学学位授与式を挙行するにあたり、各学群及び大学院研究科において所定の課程を終え、学士の学位を授与された方、修士の学位を授与された方、そして博士の学位を授与された方々に、心からお祝いを申し上げます。

また、この式典にご参列のご家族の皆様にも、この晴れの日をお迎えになられましたことを心よりお慶び申し上げます。そして留学生の皆さん、言葉や文化、生活様式の違いを乗り越えて、学位を取得するまでの道のりは大変だっただろうと思います。本当におめでとうございます。

また、熱心に学生の指導にあたって頂いた先生方、親身になって支えてくれたスタッフの皆さんにもその労をねぎらうとともに感謝の気持ちを表したいと思います。

さて、みなさんは今日、大学における学業を修めて学位を取得されました。学位は英語でアカデミック•ディグリーと呼ばれるように、学術上の程度を意味します。学術は様々なことを研究や学びの対象としますが、どのような対象であっても、それぞれの知識や技術の積み重ねがあり、原理や法則を定める理論があり、課題や問題に取り組むための方法論があり、整理整頓してまとめあげた体系があります。したがって、学位を取得された皆さんは今日、特定の学術を高いレベルで修得したことを認められたことになります。

言語や心理を学んだ人、人類や歴史、社会を学んだ人、経済や経営、法律や政治を学んだ人、福祉や行政、芸術や異文化を学んだ人、理化学や情報、環境を学んだ人など様々でしょう。しかしどのような分野であっても、学位を得た人には共通点があります。それは、その対象に関する課題や問題に向き合う時に、考えるための基本となる知識や技術が備わっていること、また、考え方や方法を知っていること、そして、自分なりの答えを出せること、さらに、自分で出したその答えの信頼度や客観性、及び限界を、自分自身で自覚できることです。

卒業とは、あらかじめ準備された知識や技術を単に修めたということの証(あかし)ではなくて、その知識や技術を基礎として、これから出くわすであろう様々な課題や問題に立ち向かっていきなさいという激励の意味もあるのです。だから、卒業のことを英語では、始まりや出発を意味するCommencement と言うのです。大学で学位を取得できた人は、高いレベルの学術を身につけた人なので、学術の力で、人の幸せや社会の発展ために、大きな貢献ができる人としてこれから期待されるのです。

みなさんがこれから出て行く社会は今、大きな変化の真只中にあると言えます。歴史を振り返ると、時代ごとに社会的な特長がありますが、現代は特に、テクノロジーが先導する社会に入っているといえます。人工知能と訳されるAI(Artificial Intelligence)は、機械学習による進化だけではなく、ディープラーニングによる開発も進み、より人間の意識や思考に近いことをできるようになっています。また、インターネットを介していろいろな物がつながるようになり、ビッグデータと呼ばれるクラウドに蓄積された大量のデータを分析し、特定のアプリケーションを介してソリューション、つまり解決策を提供する技術も高められてきております。その結果、人と物とのコミュニケーションも、その時々の状況に応じた、自然な形に近いものになりつつあります。

一方で、世界各地でグローバル化が進めば進むほど、ローカルの価値を維持し、強化しようとする動きも活発になっています。グローバルとローカルの両方のバランスが取れて、物事がうまくいけばいいのですが、場合によっては、摩擦や抵抗、争いという展開になることもあります。地域の文化や宗教、歴史や伝統、価値観の相違は、ひとつのスタンダードで収まることは難しいので、これからも多様性を重視しつつ、相互の協力や信頼構築のための継続的なコミュニケーションが必要になります。また、地域を越えたグローバルな問題や課題が認識されるようになり、例えば国連が打ち出したSDG(Sustainable Development Goals)に集約されるように、いくつかの取り組みを世界中で実行することによって、世界の平和や人権の尊重、地球環境を守るための施策が出されるようになりました。

このように大きく変化する社会の中で、今みなさんは、桜美林大学をひとまず離れて、新しい道を歩き始めるわけですが、ひとりひとりの道を私は大きな声で応援したいと思っています。今こそ、桜美林大学の建学の理念である「学而事人」を実行する時です。学んだことを人のため、社会のために還元し、人に感謝され、自分の生きがいを感じながら、充実した人生を送って欲しいと願っています。そして、これからの長い歩みの中で、より大きな事に取り組むほど、更なる学びが必要であることを実感する時もくるでしょう。そのときはまた桜美林に戻ってきて、必要な学術を修めてほしいと思います。

桜美林で学ぶ人たちや、桜美林大学の卒業生のことをオベリンナーと呼びます。すでに桜美林を卒業した人は約10万人います。ですからこれから様々な場所に出向いていく皆さんは、その場所でオベリンナーと出会うかもしれません。オベリンナーが会員となる組織があり、桜美林大学校友会と呼びますが、今日皆さんに入口のところでお渡ししたストールは、実は校友会からのプレゼントです。卒業年度と桜美林大学の校章がデザインされています。今日はプレゼントしてくれた校友会の小磯明会長も列席されておりますので紹介します。小磯明さんです。これから皆さんも校友会の一員です。世界各地に10万人のオベリンナーがいますので、ぜひこれからはこのネットワークも活用してほしいと思います。

本学はキリスト教主義に基づく学校ですので、皆さんもこれまで学びの様々な場面で、聖書に書かれていることや、その解釈に触れたことと思います。どのような状況に陥っても、皆さんは神様に祝福されていると信じて、あきらめないことです。どのような結果になっても、それは次の段階へ進むために意義があるということ。望みを失わないこと。あきらめないこと。そして何よりも、人のために尽くすことが、豊かな人生につながるのだと信じ、自分なりの学而事人を実践すること。この精神的な基盤の上で、修めた学術を十分に発揮し、人や社会に貢献しながら、桜美林大学の卒業生として、オベリンナーとして活躍して欲しいと願っています。

改めまして、卒業、本当におめでとう。そして、皆さんの新たな出発を心から祝福しながら、これをもって学長としての式辞といたします。ありがとうございました。

© HIROAKI H. HATAYAMA 2018