昨年末、12月の下旬に、「私立大学の新任学長セミナー」に参加してきた。東京大学大学院教育学研究科の大学経営・政策コースが主催するプログラムだ。
http://ump.p.u-tokyo.ac.jp
桜美林大学にも「大学アドミニストレーション研究科」があり、まさに、大学経営、教学運営をテーマにしながら、高等教育論から実際の実務までをカバーするプログラムを有している。
ただ私は今、学長に就任して以降、大アド所属の専任教員になっており、上述のようなセミナーを自分のために開催するわけにはいかず、東大さんのプログラムに参加したという、少し笑い話のような話である。
ハーバード大学にも新任の学長向けのセミナーがあるが、こちらは1週間弱のプログラムで、かなり細部のテーマまで勉強できる内容になっている。大学の経営や教学の運営が以前にも増して難しくなってきているので、今後は、このようなプログラムがもっと増えていくかもしれない。
さて、日々、学長として働いていると、本当に、大きいことから小さいことまで、単純なことから複雑なことまで、急ぐことからずっと先のことまで、嘘でしょうと思うくらい、多様な問題や課題に対峙し、学長としての答えを出していくことを経験する。
出した答えとその結果には、必ず、責任を負うことになっている。
論理的な思考だけでもダメ。感情的な思考だけでもダメ。単に行動するだけでもダメ。何もしないとよけいひどくなる。何か変えようとすると、必ず、反対や批判を受ける。学長は、多分野にわたる幅広く深い知識や、高い技能や能力、そして高潔な人格を問われるが、最も重要な素質は、強い精神力だと思う。
精神的にタフでなければ、絶対に務まらないだろう。これは職務に耐えながら、日々精進し、修行して、強くなる他ない。場数を踏んで、学長としての現場を経験していくしかないのだ。
カリキュラムのこと、学教法や設置基準のこと、文科行政のこと、私学事業のことなど、もちろん大事であるが、人に関すること(人権、人事、心理、健康、社会など)、物に関すること(不動産、施設設備、機器備品など)、お金に関すること(財務、経理など)、などにも詳しくなければならず、また、大学の将来を構想するためには、歴史や政治、経済や法律、哲学や思想、言語や文学、科学や技術など、多岐にわたる教養が必要になる。
そんなスーパーマンのような学長がいるのだろうか?学長ひとりで、これら全部できるわけない。
なので、チームで経営にあたることが重要なのである。それぞれの知識や技術や経験を持ち寄って、強いチームを構成して、大学全体を動かしていくということだ。究極は、全員野球のように全員大学経営なのである。教職員一丸となって、この船を前に動かすという。
学長の仕事は、つまり、教職員をチームとしてまとめて、船を前に進めることなのだ。汗を流して、靴底をすり減らして、みんなの士気を高めていくこと。
修行は続く。