2018年度学位授与式(3月)プロフェッショナル&大学院

今日ここに、2018年度学位授与式を挙行するにあたり、総合文化学群・芸術文化学群、ビジネスマネジメント学群、健康福祉学群、及び大学院において所定の課程を終え、学士の学位を授与された皆さん、修士の学位を授与された皆さん、そして博士の学位を授与された皆さんに、心からお祝いを申し上げます。

この式典にご参列のご家族の皆様にも、この晴れの日をお迎えになられましたことを心よりお慶び申し上げます。そして留学生の皆さん、言葉や文化、生活様式の違いを乗り越えて、学位を取得するまでの道のりは大変だっただろうと思います。本当におめでとうございます。また、熱心に学群生や大学院生の指導にあたって頂いた先生方、そして、親身になって支えてくれたスタッフの皆さんにもその労をねぎらうとともに、ここに感謝の気持ちを表したいと思います。

そして、先ほど本学からの名誉博士号を受けて頂いたジョージア国、コーカサス大学学長のカハ・シェンゲリア先生にも、心からお祝いを申し上げるとともに、日ごろの友好と協力、そして友情に感謝したいと思います。

さて、みなさんは今日、大学を卒業すると同時に学位を取得されました。学位は英語でアカデミック•ディグリーと呼ばれるように、学術上の程度を意味します。学術は様々なことを研究や学びの対象としますが、どのような対象であっても、それぞれの知識や技術の積み重ねがあり、原理や法則を定める理論があり、課題や問題に取り組むための方法があり、整理整頓してまとめあげた体系があります。したがって、学位を取得された皆さんは今日、学術を高いレベルで修得したことを認められたことになります。

どのような分野であっても、学位を得た人には共通点があります。それは、その対象に関する課題や問題に向き合う時に、考えるための基本となる知識や技術が備わっていること、また、考え方や方法を知っていること、そして、自分なりの答えを出せること、さらに、自分で出したその答えの信頼度や客観性、及び限界を、自分自身で自覚できることです。

卒業とは、あらかじめ準備された知識や技術を単に修めたということではなくて、その知識や技術を基礎として、これから出くわすであろう様々な課題や問題に立ち向かっていきなさいという激励の意味もあります。だから、卒業のことを英語では、始まりや出発を意味するCommencement と言うのです。大学で学位を取得できた人は、高いレベルの学術を身につけた人なので、学術の力で、人の幸せや社会の発展ために、大きな貢献ができる人としてこれから期待されるのです。

みなさんがこれから出て行く社会は今、大きな変化の真只中にあると言えます。現代は特に、テクノロジーが先導する社会に入っており、人工知能がより人間の意識や思考に近いことをできるようになっています。インターネットを介していろいろな物がつながるようになり、また、ビッグデータを分析することによって、人間社会の様々な問題に関する解決策を提供する技術も高められています。

一方で、世界各地でグローバル化が進めば進むほど、ローカルの価値を維持し、強化しようとする動きも活発になっています。グローバル化に対応して摩擦や抵抗、争いという展開になることもあります。地域に根ざした文化や宗教、歴史や伝統、価値観の相違は、ひとつのスタンダードで収まることは難しいので、多様性を重視しつつ、相互の協力や信頼構築のための継続的なコミュニケーションが必要になります。皆さんには、未来の社会を予測し、どのようなことが必要になるかを考え、勉強を続けながら創造的な仕事に取り組んで欲しいと願っています。

さて、今日、皆さんを祝福し、送り出すにあたり、最近私が痛感していることを皆さんと共有し、メッセージとして贈りたいと思います。それは、True to Yourselfということです。これは、英語の日常会話のフレーズや、音楽の歌詞にも使われるのですが、その意味は、自分に正直であること、または、自分が信じていることや正しいと思うことに基づいて、行動するということです。

私たちは人間ですから、その時々の知識や経験のみで物事を判断してしまい、間違ってしまうこともよくあります。自分だけの思いや判断だけでは、偏った見方に陥ることもあります。それでも私たちは、日々、学びの中にあって、その時の限定的な知識や経験に基づきながらも、やはり自分の頭で考えて、自分のことばで理解し、自分自身が納得し、そして、その時に出せる自分の判断を信じて行動することが大事だと思うのです。

私たちは、他者との関係や集団の中での自分の見え方を気にするがあまり、人間関係が気まずくなることを恐れて、正直な思いを表さなかったり、自分が納得していない判断にも関わらず、黙って従ったりすることがあります。結果的にそれがうまくいけばいいのですが、失敗すると、他人のせいにしたり、自分の思いに従わなかったことを後悔したりすることになります。

一方、自分の信念によって判断し、行動するのであれば、その責任は自分にあるので、成功しても失敗しても、その結果を真摯に、率直に受け入れるとともに、経験的な学びを得ることができます。様々なことに直面する中で、常に自分に問いかけ、自分に正直であることを心がければ、知らないことやできないことに対しては謙虚になれるし、前に進むときにも、自分が納得することに重きを置くので、考え抜くことで、潔い判断や勇気ある行動につながります。

自分に正直であること、自分が正しいと思うことに基づいて、行動することを心がけてほしいと思います。多様な価値がぶつかり合うグローバル社会で、これからますます、社会の変化を予測して創造的に仕事をしながら共生できる人が望まれるのです。

今みなさんは、桜美林大学をひとまず離れて、新しい道を歩き始めるわけですが、ひとりひとりの道を私は大きな声で応援したいと思っています。建学の理念である「学而事人」を実行してください。学んだことを人のため、社会のために還元し、人に感謝され、自分の生きがいを感じながら、充実した人生を送って欲しいと願っています。そして、これからの長い歩みの中で、より大きな事に取り組むほど、更なる学びが必要であることを実感する時もくるでしょう。そのときはまた桜美林に戻ってきて、必要な学術を修めてほしいと思います。

桜美林で学ぶ人たちや、桜美林大学の卒業生のことをオベリンナーと呼びます。すでに桜美林を卒業した人は約10万人います。ですからこれから様々な場所に出向いていく皆さんは、その場所でオベリンナーと出会うかもしれません。オベリンナーが会員となる組織がありますが、桜美林大学には校友会があり、今日皆さんに入口のところでお渡ししたストールは、校友会からのプレゼントです。卒業年度と桜美林大学の校章がデザインされています。

今日はプレゼントしてくれた校友会の小磯明会長も列席されております。また、中学や高校の卒業生も含めたい桜美林学園の同窓会もあります。同窓会の長谷川哲雄会長も、今日はお祝いにかけつけてくださっています。これから皆さんも校友会、同窓会の一員です。世界各地に10万人のオベリンナーがいますので、これからはこのネットワークも活用してほしいと思います。

最後になりますが、どのような状況に陥っても、皆さんは神様に祝福されていると信じて、あきらめないことが大事です。どのような結果になっても、それは次の段階へ進むために意義があるということ。望みを失わないこと。あきらめないこと。そして何よりも、人のために尽くすことが、豊かな人生につながるのだと信じ、自分なりの学而事人を実践すること。この精神的な基盤の上で、修めた学術を十分に発揮し、人や社会に貢献しながら、桜美林大学の卒業生として、オベリンナーとして活躍して欲しいと願っています。

改めまして、卒業、本当におめでとう。そして、皆さんの新たな出発を心から祝福しながら、これをもって学長としての式辞といたします。ありがとうございました。 

 

© HIROAKI H. HATAYAMA 2018