7月18日 職員研修会にて
あまり好きな言い方ではないのですが、「ワーク・ライフ・バランス」ということばがあります。ワークは仕事、ライフはプライベートや生活のことで、人生の中で、バランスを取って生きていくということでしょうか。
豊かに生きるために、人生の節目節目でバランス取ってことですかね。
この用語の前提となっているのは、ワーク、つまり、仕事をしているときは、誰か他の人のために時間や労力を費やしているということ。それはプロジェクトチームの同僚だったり、同じ所属部門での協働だったり、組織内の他の部門の人々のため、あるいは、大学でいうと、学生や教職員のため、そして、広く社会のため。
言い換えれば、仕事というのは、基本的には他者のために働いて、自分はその対価を得ていると。
そしてその得られた対価は、自分や家族のために使う、つまり、ライフの充実のために戻すと。そんな構図ですね。ワークは他者のため、ライフは自分のため。
今日はこの研修会で、どんな話をしようかと考えていたのですが、まずは、自分の家族の話から始めたいと思います。
私の父は、今年、90歳になります。母は86歳です。父に、先日、新しいノートパソコンを買ったのですが、定年退職してから習い始めたにしては、かなり使えるほうだと思います。90歳ですし。毎朝、新聞のエッセイをパソコンに打ち込んだり、さつま狂句を作ったりしています。
母は、タブレットでLINEを楽しんだり、読書したりしています。午後になると、両親とも、自宅に隣接する畑で農作業をし、夜は、焼酎を飲んで、野菜や魚を食べて、テレビを観て、早めの就寝という毎日をおくっています。
鹿児島の海の近くで暮らしているのですが、このような生活をおくっているのは、子供たちに迷惑をかけないように、できるだけ健康に暮らすという目的を持っているのだそうです。そんな思いが、生きる、あるいは健康で長生きしようとする原動力になっているわけです。
これに連想して思い出されるのは、私の祖父母が、私が小さい時によく語ってくれた、鹿児島に伝わる教訓、生きるためのことわざのようなもの。祖父は私が小さい頃に、よく、鹿児島弁で、「泣こかい、飛ぼかい、泣こよか、ひっ飛べ」と言ってました。崖の前でぐずぐず泣くくらいだったら、思い切って飛んじまえ。物事に迷ってぐずぐずするのであれば、やらないよりも、思い切ってやってしまえ、という教えでした。
いっぽう祖母は、また別の視点から、こんなことをよく言ってました。「我が身をつねって、人の痛さを知れ」。自分の手や足を自分でつねってみれば、その痛さがわかるだろう。そんなことを人にしたらいけないよ、という教えです。人を傷つけたらいけないことをわからせるためのレッスンですね。
生きていく中で礎となる教訓みたいなものです。
そして、ワークにしても、ライフにしても、充実感を得たいのであれば、単に、直面しているそのことのみに意味や意義を感じ取ろうとしても、時間は過ぎていくだけで、その場の楽しやや面白さはあっても、終わった後の空虚な気持ちはどうしても避けられないのではないでしょうか。
友人と一緒に、海に行って、1日遊んで、とても楽しかった。遊んでいるそのことのみの楽しさであれば、最後には終わってしまう。
でも、単にそのような行動のみを楽しいとするのではなく、その行動を通してその友達との友情やつながりに意義を感じ取れば、それは喜びになるのです。1日、海で遊んで、その日は終わってしまうのですが、友情やつながりをより強固にできたという充実感や幸せが残るということです。
これを意識するかしないかで、人生は大きく変わると思います。
人生を支えている、ひとつの教訓やことわざ、あるいは考え方があれば、すべてのことが、それが土台となった活動となり、その活動を通して達成できる充実感を得られるのではないか。
つまり、充実感はどこから生まれるかを知らなければならないのです。
生きがいみたいなものです。
活動そのもの、つまりパソコンで文章を入力したり、農作業をしたり、海に遊びにいったりするようなことだけで、楽しさを求めるのではなく、それらの活動を通して何が達成されるのか。どんな考え方の元に、そのような活動をやっているのかに意識を向けるのです。
キャリアを重ねていく中で、だんだんと責任が重くなったり、扱う領域が広がったり、仕事の時間が長くなったり、労力がさらに必要になったり、はたまた、休みが少なくなったりするでしょう。
そのことのみを考えると、つらいですね。逃げたくもなるでしょう。
でもそこに、たとえ仕事であっても、それを支える、それに意義や意味を与える、教訓やことわざのようなものが必要なのです。そして、そんな仕事をする中で達成されること、得られる充実感、仕事を支える自分なりの土台や礎、哲学、思想、考え方。
そうすると、
だんだんとワークとライフ、仕事とプライベートの区別がなくなってきます。仕事に充実感が得られれば得られるほど、この区別はなくなってくるのです。それこそが人生で、ワークが充実すれば、ライフも充実するし、ライフが充実すれば、ワークも充実するからです。
コツは?
ライフでも、ワークでも、悲観しないことです。大楽観です。
何事も前向きに、ポジティブに思考し、おおらかなことばで、人生の物事を語ることです。
うまくいくという言葉にすればするほど、現実もそのようになってくるからです。土台となる教訓の上でワークやライフの活動を重ね、常に、前向きでポジティブな言葉の形に実際を合わせていくこと、うまくいくことを信じきること。
そうすると、自然にバランスが取れたワーク・ライフになるのです。