2019年度の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。
また、保護者の皆様にも心からお祝いを申し上げます。これまで卒業生を支えてこられて、今日の日を迎えられたことに敬意を表するとともに、その苦労をお互いに慰労し、共に喜びたいと思います。
本来であれば学位授与式の場でこの祝辞を述べるべきところですが、今回は残念ながら開催の見送りを余儀なくされましたので、このような形でお話させて頂きます。
皆さんは今日、大学を卒業すると同時に学位を取得しました。学群を卒業した人は学士、大学院を修了した人は修士や博士です。学位は学びの位(くらい)と書きますので、まさしく、学びのレベルを表します。大学や大学院で定められた教育課程を修了し、高いレベルの学術を身につけたことを証明するのが学位です。国際的にも通用しますので、まずは、修めた学術と自分の実力に自信を持ってください。
さて、これから先、いろんな人に聞かれると思いますが、「大学で何を勉強したの?」と言われたら皆さんはどう答えますか?
すぐに思いつくのは、学群や学類の名称、大学院の研究科の名称、あるいは自分が専攻したプログラムの名前でしょうか。実際、皆さんが取得した学位記にも、何学を修めたのかが書いてあります。
しかし皆さんが勉強したのは、単にその分野の知識を増やしただけではありません。
授業を思い出してみてください。かなり多くの科目を履修し、いろいろな先生の授業を受けたことでしょう。それぞれの授業には、大きなテーマがあり、複数の重要なトピックに取り組みながら、人間や社会、自然世界のいろいろな事象について理解を深めたことと思います。講義や読書、ディスカッションや課題、グループワーク、実技や実習など、様々な学修活動を行ってきました。
これらの活動は、言い換えると、「何が、どのようになるのか」とか、「何を、どのようにすべきか」という問いに対して、常に答えを出そうとする努力を続けてきたということなのです。大学の授業を通して、かなり多くの質問や疑問に高いレベルで答えてきた結果が学位取得なのです。
そして、授業から飛び出して、部活動やアルバイト、留学やボランティア、あるいは自分で企画した活動を続けた人もたくさんいると思います。大学時代に自分の生き方が変わった人もたくさんいると思います。それは、大学で学んだ知識や技能が刺激となって、皆さんの実際の生活に活用され、生き方が変わるということなのです。大学での経験は、皆さんの人生を大きく変えていくことになると思います。
私たちが生きる世界は変化を続けます。そして私たちは生きる環境の中で、様々な状況に置かれながら、いろんな事象に向き合わなければなりません。その時に「何がどのようになっているのか」、「何をどのようにするのか」という問いに答えながら、「それはなぜか」を考え、表現することを繰り返して生きるのです。大学では様々な理論や概念、方法や実践を修得してきた皆さんの変化に対する対応力は、かなり上がっているはずです。
これから皆さんのほとんどは社会人として仕事を始めると思います。社会は相互依存で成り立っています。私たち一人ひとりが特定の「仕事」、つまり、「ある事に仕える」ことによってお互いに恩恵を受けながら生きています。結局、「自分は何をして社会に貢献するか」、「他の人に対してどんな価値を創出できるのか」が、これからの皆さんの課題になります。
桜美林大学のモットーは、「学而事人」、まなびしこうしてひとにつかえる、学んだ事を他者のために使うということです。それはまさしく共に生きる「共生」を目的とした教えです。大学で高いレベルの学問を修めた皆さんへの期待は大きく、また、その学びが深くて広ければ、その分だけ社会に貢献できる可能性も高くなります。存分に皆さんの力を発揮してほしいと思います。
そこで皆さんにふたつのメッセージを伝えておきたいと思います。まず一つめですが、それは、「自分が主人公の物語を生きて欲しい」ということです。その時々で自分に与えられる仕事や課題は、自分ではコントロールできないかもしれません。しかし、与えられたミッションに一生懸命取り組むことが、本当に大事なことです。それをクリアすると、次に進めるからです。
そしてそれよりも大事なことは、大きな物語の中で、日々の仕事や生活を捉えることです。自分が主人公となって描いた大きな物語の中の一場面として、エピソードとして、今取り組んでいる仕事や生きている現在を位置づけるのです。自分が懸命に取り組んでいることがひとつひとつ実現することによって、生きている社会全体が良くなると考えてください。
ふたつめのメッセージです。それは、「桜美林で学んだスピリットを持ち続けてほしい」ということです。桜美林はキリスト教主義教育の学校ですので、皆さんは知らない間に、三つの概念のもとに教育を受けてきました。それらは、「真理」、「善良」、「愛情」です。このみっつはバイブルでも説かれています。
それから桜美林の長い伝統の中で培われてきた概念があり、それらは、「厳格」「寛容」「柔軟」「楽観」「信念」です。何事も高い基準を目指して努力するので、その基準を達成しようと努力することについては厳格であってほしい。しかし、人間なのでうまくいかないこと、他者の失敗などについては寛容であってほしい。また、人それぞれ考え方や価値観が異なるので、多様性の中では柔軟な心で対応してほしい。さらに、物事はいつもうまくいくとは限らず、苦難や苦労も多いけれども、いつでも前向きな気持ちで、なんとかなるという楽観的な気持ちを持ち続けてほしい。そして、夢は必ず実現できると信じて、あきらめないで挑み続けてほしい。
桜美林の学生は非常にポテンシャルが高いと思います。まだまだ伸びる資質や可能性を秘めていると感じています。しかし、そのポテンシャルを本当に引き出すのは自分自身なのです。大学での学修は自分を成長させるためのリソースに過ぎません。あとは自分次第。その原動力になるのは、今みなさんに紹介した8つの概念、真理、善良、愛情、厳格、寛容、柔軟、楽観、信念です。オベリンナーの特徴と言ってもいいかと思いますが、必ずみなさんのこれからの人生を支えますので、覚えておいてください。
桜美林の卒業生が10万人いて、世界各地で、いろいろな業界で、活躍しています。この大きなオベリンナーのネットワークは、卒業生の財産です。必ず力になってくれると思いますので、学園の同窓会、及び、大学の校友会のサービスを利用して、これからの自分の人生に役立ててください。私もオベリンナーですので、皆さんが卒業したあとも、どこかでまた会えると思います。気が向いたら大学にも帰ってきてください。卒業本当におめでとう。これでお祝いの言葉を終わります。ありがとうございました。