朝礼拝6月

 一昨日(6月10日)のオープンキャンパスは、台風の影響で風雨が強かったにも関わらず、2600人を超える来校者がありました。昨年度の同時期よりも1000人多く、また、2017年度の志願者総数が14000人を超えたことを考えれば、順調に本学を志願する受験生が増えていることがわかります。

 志願者が増えることはもちろん喜ばしいことですが、単に数だけを考えるのではなく、社会全体の動きの中でこの現象を把握しておくことも必要です。私は先週から今週にかけて、複数の会合に出席しました。金曜日はキリスト教学校同盟の総会が関東学院大学で開催され、出席しました。土曜日は、ネットワーク多摩の未来創造フォーラムにパネリストとして参加しました。日曜のオープンキャンパスでは高校生や保護者の方々向けの学長挨拶を行い、また、昨日は、大学経営協会の総会と講演会、情報交換会に出席しました。そして来週は、JMOOCの総会で、講演することになっています。

 このような会議でいろいろな人たちと交流する中で見えてくるのは、経済の状況や国の政策が、いかに大学に大きな影響を与えるかということです。先日、東京23区内の大学収容定員について、今後10年間は増員を凍結し、定員増や学科設置等の申請を受け付けないことが発表されました。また、収容定員を一定以上超えて学生を受け入れてしまうと助成金を受け取れず、また、新たな学部学科の設置等も認められないことになっています。このような政策を受けて、昨年度はかなり多くの首都圏の大学が合格者、入学者を制限し、厳しいアドミッションを行いました。その結果、23区内の学部学科が不合格だった受験生が、多摩地区の大学の学部学科に流れたと聞きます。

 また、国は、18歳人口の減少と少子高齢化による将来的な不安から、労働者を確保し、国の経済を建て直すために、留学生30万人受け入れ計画や社会人のリカレント教育に力を入れています。さらに、大学教育を無償化する政策も進行中で、より多くの国民に大学教育を受けさせ、実務的な力を養成し、働き手を確保する道筋を構築中です。それとともに、このような目的に沿った形の大学改革を断行しない大学は、支援の対象からはずすことまで議論されています。

 その結果、23区内の定員抑制を行いつつも、留学生や社会人はその対象からはずすこととし、また、大学には、より実務教育を推進させるために、実務家教員を採用し、卒業後の仕事に直結するようなプログラムを展開する大学に対して、競争的資金などの支援を行なっていくとのことです。全国の国公私立を超えた大学の統廃合も少しずつ、進んでいくことでしょう。

 人口減少、経済の縮小、国際化、グローバル化の中で、様々な動きが、国主導、地方自治体主導、国際社会主導で起こっていく中で、大学経営もかなり振り回されてしまうであろう危惧もありますが、個々の大学はそれぞれの理念や歴史、特色を基本として、常に社会に対する貢献や価値創造を自らの意志で行っていく努力を続けていかなければなりません。それこそが、受験生や保護者、卒業生や関係者から期待されていることだと思います。

 建学の初心を忘れず、私学の桜美林として、果敢に教育研究事業に取り組んでいきましょう。

 

© HIROAKI H. HATAYAMA 2018