2018年度3月学位授与式 リベラルアーツ学群

2018年度 学位授与式(3月) 式辞

今日ここに、2018年度学位授与式を挙行するにあたり、リベラルアーツ学群において所定の課程を終え、学士の学位を授与された皆さんに、心からお祝いを申し上げます。この式典にご参列のご家族の皆様にも、この晴れの日をお迎えになられましたことを心よりお慶び申し上げます。

また、留学生の皆さん、言葉や文化、生活様式の違いを乗り越えて、学位を取得するまでの道のりは大変だっただろうと思います。本当におめでとうございます。

そして、熱心に学生の指導にあたって頂いたリベラルアーツ学群の先生方、親身になって支えてくれたスタッフの皆さんにもその労をねぎらうとともに、感謝の気持ちを表したいと思います。

さて、みなさんは今日、大学を卒業すると同時に学位を取得されました。学位は英語でアカデミック•ディグリーと呼ばれます。学位は学術上の程度を意味します。学術は様々なことを研究や学びの対象としますが、どのような対象であっても、それぞれの知識や技術の積み重ねがあり、原理や法則を定める理論があり、課題や問題に取り組むための方法があり、整理整頓してまとめあげた体系があります。したがって、学位を取得された皆さんは今日、学術を高いレベルで修得したことを正式に認められたことになります。

リベラルアーツ学群において、言語や文学、心理を学んだ人、人類や歴史、社会を学んだ人、経済や法律、政治を学んだ人、あるいは、理化学や情報、環境を学んだ人など様々でしょう。しかしどのような分野であっても、学位を得た人には共通点があります。それは、その分野に関する課題や問題に向き合う時に、考えるための基本となる知識や技術が備わっていること、また、考え方や方法を知っていること、そして、自分なりの答えを出せること、さらに、自分で出したその答えの信頼度や客観性、及び限界を、自分自身で自覚できることです。

卒業とは、あらかじめ準備された知識や技術を単に修めたということではなくて、修めた学術を基礎として、これからの人生で出くわすであろう様々な課題や問題に立ち向かっていきなさいという激励の意味もあるのです。だから、卒業のことを英語では、始まりや出発を意味するCommencement と言います。大学で学位を取得できた人は、高いレベルの学術を身につけた人なので、その力で、人の幸せや社会の発展ために、大きな貢献ができる人としてこれから期待されるのです。

また、リベラルアーツ学群を卒業したということは、広い教養を身につけたということではありません。教養というと、広さばかりが強調され、深さを軽視する傾向があるので、教養という言葉そのものが、みなさん自身の力量を制限してしまいますが、本来、複数のアーツとサイエンスを専門的に学ぶことの特別な力をリベラルアーツ学群は謳っているわけですので、この学群を卒業した皆さんは、教養という言葉で自分の力量をくくってしまうのではなく、必要なことは多分野にわたって広く深く、積極的に学び続け、道を切り開いてほしいと願っています。

さて、今日、皆さんを祝福し、送り出すにあたり、最近私が痛感していることを皆さんと共有し、卒業のメッセージとして贈りたいと思います。それは、True to Yourselfということです。これは、英語の日常会話のフレーズや、音楽の歌詞にもよく使われるのですが、その意味は、自分に正直であること、または、自分が信じていることや正しいと思うことに基づいて、行動するということです。

私たちは人間ですから、その時々の知識や経験のみで物事を判断してしまい、間違ってしまうことがあります。自分だけの思いや判断だけでは、偏った見方に陥ることもあります。それでも私たちは、日々、人間としての学びや成長の中にあって、その時の限定的な知識や経験に基づきながらも、やはり自分の頭で考えて、自分のことばで理解し、自分自身が納得し、そして、その時に出しえる自分の判断を信じて行動することが大事だと思うのです。

私たちは、他者との関係や集団の中での自分の見え方を気にするがあまり、特に人間関係が気まずくなることを恐れて、正直な思いを表さなかったり、自分が納得していない判断にも関わらず、黙って従ったりすることがあります。結果的にそれがうまくいけばいいのですが、うまくいかなかったり、失敗したりすると、他人のせいにして、自分の本当の思いに従わなかったことを後悔したりすることになります。

一方、自分の信念によって判断し、行動することができれば、その責任は自分にあるので、成功しても失敗しても、その結果を真摯に受け入れるとともに、経験的な学びを得ることができます。様々なことに直面する中で、常に自分に問いかけ、自分に正直であることを心がければ、知らないことやできないことに対して謙虚になれるし、前に進むときにも、自分が納得することに重きを置くので、考え抜くことで、潔い判断や勇気ある行動につながります。

実は、そのような資質や態度は、皆さんはすでに、リベラルアーツ学群の豊かな教育の中で、身につけていると思うのです。学問によって自由自在の思考を手に入れているので、これからの人生で出くわす激しい雨にも、強い風にも屈することなく、自分の見識を信じて頑張って欲しい。自分に正直であること、自分が正しいと思うことに基づいて、行動することを心がけてほしいと思います。これからは、ますます、社会の変化を予測して創造的に仕事をできる人が望まれます。多様な価値がぶつかり合うグローバル社会で、共生できる人が望まれるのです。

今みなさんは、桜美林大学をひとまず離れて、新しい道を歩き始めるわけですが、ひとりひとりの道を私は大きな声で応援したいと思っています。建学の理念である「学而事人」を実行してください。学んだことを人のため、社会のために還元し、人に感謝され、自分の生きがいを感じながら、充実した人生を送って欲しいと願っています。そして、これからの長い歩みの中で、より大きな事に取り組むほど、更なる学びが必要であることを実感する時もくるでしょう。そのときはまた桜美林に戻ってきて、必要な学術を修めてほしいと思います。

桜美林で学ぶ人たちや、桜美林大学の卒業生のことをオベリンナーと呼びます。すでに桜美林を卒業した人は約10万人います。ですからこれから様々な場所に出向いていく皆さんは、その場所でオベリンナーと出会うかもしれません。オベリンナーが会員となる組織がありますが、桜美林大学には校友会があり、今日皆さんに入口のところでお渡ししたストールは、校友会からのプレゼントです。卒業年度と桜美林大学の校章がデザインされています。今日はプレゼントしてくれた校友会の小磯明会長も列席されております。また、中学や高校の卒業生も含めたい桜美林学園の同窓会もあります。同窓会の長谷川哲雄会長も、今日はお祝いにかけつけてくださっています。これから皆さんも校友会、同窓会の一員です。世界各地に10万人のオベリンナーがいますので、これからはこのネットワークも活用してほしいと思います。

最後になりますが、どのような状況に陥っても、皆さんは神様に祝福されていると信じて、あきらめないことが大事です。どのような結果になっても、それは次の段階へ進むために意義があるということ。望みを失わないこと。あきらめないこと。そして何よりも、人のために尽くすことが、豊かな人生につながるのだと信じ、自分なりの学而事人を実践すること。この精神的な基盤の上で、修めた学術を十分に発揮し、人や社会に貢献しながら、桜美林大学の卒業生として、オベリンナーとして活躍して欲しいと願っています。

改めまして、卒業、本当におめでとう。そして、皆さんの新たな出発を心から祝福しながら、これをもって学長としての式辞といたします。ありがとうございました。 

© HIROAKI H. HATAYAMA 2018