【活動報告】神奈川県綾瀬市「あやせフレンドシップキッズ」最終クラス実施しました②

神奈川県綾瀬市は、同市内の米軍厚木基地(正式名称:厚木海軍飛行場) と連携し、あやせっ子日米交流事業として「あやせフレンドシップキッズ」 に取り組んでいます。桜美林草の根国際理解教育支援プロジェクトは、2021年度より同市よりご依頼を受け、「交流とは何か」を出発点に、人間のコミュニケーションのしくみやあり方、人や文化の多様性などをキッズたちが学ぶワークショップ型クラスの企画・実施の役割を担っています。

同事業に携わり2年度目。私たちが企画・実施する全4回のキッズ研修はすべて対面で行いました。そのほかの交流・体験活動もほぼすべて対面で実施できたということです。そこで、今年度の活動全体をこどもの発達の観点から概観し、私たちなりに考察してみたいと思います。なお、キッズ研修最終回(2023年2月18日)については、こちら(活動報告①)よりご覧いただけます。そして、交流・体験活動前のクラス(2022年8月21日・28日・9月3日)については、こちらより活動報告記事をご覧いただけます。

対面による他者との関わり

アンクルンの合奏

今年度の私たちの担当するキッズ研修は、すべて対面によるワークショップ(学習者が学びの主体として参加・体験する形の学習)で実施することができました。クラスでは、私たちの持つ異文化の実物資料をハンズ・オン教材として活用した協働的なアクティビティもできました。 前半のクラスではインドネシア、トルコ、モロッコのコマ、最終回はインドネシアの伝統楽器「アンクルン」を使いましたが、いずれもキッズたちにとっては初めて見て触れる物でした。その未知で異文化のものに対し、彼らは自身の五感をフルに使って思考を巡らせていました。また、これらの実物資料を介して関わりあい、その過程で少しずつ協働の仲間として関係性を築いていきました。

インドネシアのアンクルン

そのような3回のワークショップ型のクラスを経た後、キッズたちは基地に暮らすさまざまな人との交流・体験活動にのぞみました。今年はその活動のほぼずべてが対面で実施されたそうです。私たちのクラスで学んだコミュニケーションの大切さやポイントを交流・体験活動のなかで実践しました。私たちのクラスはワークショップ型学習です。学習者が学びの主体となって参加することで学習活動が始まるものです。指導者がレクチャーによって教え導くものではなく、学習者が自分たちの体験を通じて気づきを見出す学習方法です。そのようにして獲得した学びをたくさんの人との出会いやさまざまな体験によって、さらに深めることができたようです。

共感 - こどもの発達から考える

すべての活動を終えたキッズたちを思い浮かべ、いま私たちが考えること。それは「共感」です。共感とは、他者が経験したことやそのとき抱いた感情や思考を、その人の表現(言葉や言葉以外のメッセージ)を通して、情景を思い描いたり、心の動きを感じたり、考えを巡らせたりすることです。それは、まるで自分が経験したことであるかのように、その人の思いや考えを共にすることです。言い換えるなら、共感とは「寄り添う」ということです。他者と共に生きるうえで欠かすことのできない人間としての資質・能力です。

児童期の後半(小学校高学年くらい)になると、自他の違いを認識できるようになり始めます。すると、自分中心の物事の見方や考え方から、自分ではない他者の立場になって物事をとらえられるようになっていきます。また、相手の立場や置かれた状況から、その気持ちや考えを想像したり理解しようとしたりできるようになります。このような認知発達が、まさに共感力の素地となるのです。では、どのようにしてこの共感力は育つのでしょうか。そのカギは2つあると考えます。

まず、多様な人たちとたくさん関わりあう体験です。いつも一緒にいる慣れ親しんだ人、同じくらいの年齢・学年の人、考え方やセンスが近い人、自分のことをよくわかってくれる人などではない、「ちがう・知らない・わからない」人たちです。自分と相手の共通点や類似点が少なく異なる点が多いほど、人間は不安や戸惑いや葛藤を抱きます。ときには相手との間で誤解や衝突などが生じることもあります。

その一方で、「異」や「未知」に対する興味・関心や疑問を抱いたり、「伝えたい、わかりたい」という希望を持ち、相手に寄り添い、耳を傾けようとします。自分なりの努力や試行錯誤を重ね、わかりあえたときには大きな喜びや気づきを見出します。場を共にし、目標や活動を共にすることで、対話を重ねて互いの思いや考えを共有します。そのようしながら、他者の立場や多面的・複眼的な考え方を試みる機会を経験していきます。多様な人との関わりあう体験には、他者理解と自己理解の学びがあふれています。

そして、もう一つは、五感が豊かに刺激される体験です。自らの五感をつかった体験は心を揺り動し、さまざまな感情体験が起こります。心が豊かに動くことで、思考が活発になります。例えば、物事の見方や考え方が多面的・複眼的になったり、疑問や課題を見出したり、自分なりの根拠をもって考えを組み立てたりするなどします。 これらの思考の活動は、頭だけで理解したときよりもずっと活発で、広がりと深まりを増します。

コマの回し方伝言ゲーム。初めて出会うコマの回し方を仲間に伝え、回せるようになってもらいます。

このような感情と思考の体験は、自分ひとりで何かをするときよりも、他者と共に関わり合ったり、物事に取り組んだりするときのほうが、はるかに豊かなものになります。他者の存在や言動により考えの引き出しが増えたり、他者の助けを得てなにかを成し遂げたり、自分自身や他者の新たな一面を発見したりします。

対面による活動を認知発達という観点から考えると、今年度の一連の活動が子どもたちの発達、特に、共感力の育ちに与えた影響は、非常に大きいものであったと言えるでしょう。さまざまな人たちと場を共にする対面の活動であったからこそ、相手の存在を目の前でしっかり認識し、そこに現れる他者の思いや考えをキッズたちはそれを全力で読み取ろうと耳を傾けたでしょうし、自身も相手のために一生懸命伝えようと頑張ったことでしょう。

学習者の特徴にあわせた学びづくり

全員でつくりあげたポスターを見ながら振り返りました。

草の根プロジェクトが携わるあやせフレンドシップキッズ(神奈川県綾瀬市)の取り組みを報告しました。こちらの現場では小学校4~6年生が学習対象者ですが、私たちの教育活動は小学生や学齢期の児童生徒に限ったものではありません。あらゆる年齢・発達段階の学習者の学びづくりに取り組んでいます。未就学児から成人、親子・家族での体験、教職員研修や保護者の学びなど、多様な学習者の多様な学びをそれぞれの発達段階や特徴、学習目標や希望などにあわせ、さまざまなかたちの学びを企画・実施しています。また、ご依頼をいただく現場・地域もさまざまです。それぞれの特徴、ねらいや希望などを考慮しながら、依頼者のみなさんと共に学びづくりをします。

社会は新しいステージに進もうとしています。この3年間、私たち草の根プロジェクトは試行錯誤しながら新しいかたちの実践を積み重ね、いくつもの気づきを得ました。対面/オンライン、あるいは両者をうまく組み合わせたハイブリッドといった活動の実施形態の選択肢が増えるとともに、そのなかでヒト(多様な人材)やモノ(実物資料)を活用するプログラムの幅も広がりました。今後も異文化間能力の育成をめざし、多様な方法で柔軟により多くの学習者・現場の学びづくりをお手伝いしてまいります。

★最新のニュースレター48号をご覧ください★ 各種ワークショップやその意義・ねらいを改めてお伝えするとともに、想定可能な実施対象・現場はじめ詳細な情報をコンパクトにまとめてお届けしています。新年度の計画や学びづくりの参考にしていただければと思います。

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