【報告】世界の実物体験ワークショップ実施(町田市立真光寺中学校):2019年7月6日(土)

町田立真光寺中学校では、毎年この時期に「国際交流の日」という全校行事を開催しているそうです。32回目の開催となる今年、私たち草の根プロジェクトにもお声がけがあり、3学年のある学級の子どもたちを対象に 世界の実物資料を活用したワークショップを実施しました。

「多様性の理解」とは

「みんなちがって みんないい」金子みすずの有名な詩の一節ですね。家庭・社会・学校さまざまな教育現場でしばしばこの言葉が用いられ、多様性を理解する感性や思考を育てようと取り組まれています。高度情報社会といわれる今日、海外の音楽やドラマ・映画、ファッションなどが大変身近なものになりました。 何らかのかたちでそういった異文化に触れ、関心を寄せる子どももいるでしょう。そんな環境に生きる子どもたちは、多様性というものをわりと自然に感じ取っているのではないでしょうか。

一方では、思春期まっただなかの子どもたちです。頭ではわかっていても、自分と何かが似ていたり近かったりする人同士で仲間を作りたがります。逆に、未知の人や物事、自分との差異が大きい考えなどに対しては、距離をとったり拒むような言動をしたりします。さまざまな「多様性」があふれる中で育っているものの、真にそれを受け止め、理解・尊重することが、認知・行動レベルで実践することは非常に難しいということです。

ただ、このような行動は、この時期の子どもに限らず、人間本来の防衛本能ともいえます。成長・発達過程のなかで、大小さまざまな「異」との出会いや接触を積み重ね、その都度いろいろな感情体験を重ね、人は学習します。そのため、「異」に対して関心を抱きつつも、緊張感や警戒心を持って動くのです。多様性の理解や尊重とは、子どもも大人もみんなで育てていかねばなりません。

この日のワークショップでは、本学リベラルアーツ学群で1年生対象のリベラルアーツセミナーで行ってたプログラムをベースにしました。

今回のワークショップでは以下のアクティビティで構成しました。

①バースデーチェーンでグループ分け

言葉を使わずにクラス全員で誕生日順に1つの輪をつくります。このアクティビティを使って、全員を3〜4名ずつのグループに分けます。このアクティビティでは、言葉の代わりに、手や身体で誕生日や意思を表し合い、それをお互いに読み取り、完全な誕生日順の円を作らなければなりません。単なるグループわけではなく、参加者全員の参加と「聴く+協働」が求められる活動なのです。

②触察伝言ゲーム

本プロジェクトが持つ世界各国のコマやけん玉を活用します。このゲームでは、グループ内に触察係と探索係に分け、触察係が「触察」して得た情報を探索係に伝えます。探索係は触察係とのやりとりで得た情報をもとに触察係が触察した資料を見つけ出します。

グループごとに触察係と発見係が向かい合って触っています。全員がアイマスクを着用し、触察係が題材である物を一人ずつ触察します。写真は、触察が終わった後にエデュケーターが全グループから題材を回収し、ランダムに並べた世界のコマやけん玉の中に隠しているところです。
物を隠し終わった後は伝言タイムです。触察係は、自分が触察したものがどんなものだったのか発見係に伝えます。この後発見係は不規則に並べられた数多くの物の中から、触察係が触察したものを見つけなければなりません。そのため、発見係もただ伝言を聞くだけでなく、疑問に思ったことを触察係に質問して情報を収集しなければなりません。

伝言を終えた後には、発見係だけが物を集めて並べたマットの周りに集まります。そして、触察係のように物に触れることなく、自由に動き回りながらさまざまな角度から物を観察して自分のグループの題材となった物を探し出します。触察係が物を選んだ後には、グループごとになぜそれを選んだのか、どんな情報をもとに選んだのか全体にシェアして振り返ります。

③世界のコマの回し方クイズ

触察伝言ゲームでは、全てのグループ世界各国のコマ(独楽)を題材として使用しました。次は世界の独楽の回し方クイズです。このクイズでは、各グループが触察伝言ゲームで題材となったコマの回し方を考え、実際に回すことによって答えを出します。いずれのコマも、日本で育った多くの人にとっては初めて出会うものです。それをグループの全員で知恵を出し合い、試行錯誤することでコマの回し方を見つけ出していきます。

インドネシアの竹のコマの回し方を考えるグループ

④アンクルン合奏ゲーム

最後のアクティビティは、アンクルン合奏ゲームです。インドネシアの無形文化遺産である「アンクルン」という竹の楽器を使用します。3〜4名のグループを2つ合体して7〜8名のグループをつくり、それぞれに1オクターブ分(計8点)になったアンクルンを渡します。各グループでアンクルンの合奏方法を考え、「ドレミの歌」の合奏にチャレンジします。

アンクルンを一人1〜2点ずつ持ち、合奏する方法につい相談しているところ

学校教育での実施の場合、子どもたちのなかには関係性や集団における存在(キャラ)が構築されています。また、地域性によっては、「異」や「未知」の人・物事との接触が少なかったりといった背景や特徴があります。私たち草の根プロジェクトは、必ず対象となる子どもたちやその地域について十分に理解することを欠かしません。そのうえで、対象者にとって必要な力とは何か、どんな学習活動を経験できたら彼らの学び・育ちに貢献できるかと熟慮し、ワークショップのプログラムをデザインします。

この日も私たちはこうしたアクティビティを通じて「国際理解とはどういうことか。異文化を理解するにはどうしたらよいか」ということ考えるような授業を行いました。興味津々わくわくした面持ちの子どももいれば、緊張気味の子ども、照れ隠しでおもしろい言動をする子ども、なかなかスムーズに動かない子どもも。しかし、始まると、徐々にその様子は変わっていきます。私たちが語りかけることばに耳をかたむけ、うなずき、真剣なまなざしで話を聴いていました。自分がいる今は、小さな小さな世界なんだと、そんな心の中の気づきがきこえてくるようでした。

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