【コラム】学而事人と草の根プロジェクト① 学生はどんな活動をしているか

草の根国際理解教育支援プロジェクト(草の根プロジェクト)です。2019年度も残り2ヶ月をきりました。さて、私たち草の根プロジェクトの今年度中のアウトリーチ教育プログラムは、3月までの実施予定を含めると、その実績は計96件となります。これらの多くの活動において、学生たちが大きな力となっています。今年度は24名の学生たちが、学内外におけるワークショップや出張博物館の実施にのべ134回携わりました(3月の予定も含む)。学生スタッフは本プロジェクトの活動に参加することで「人々の学びに貢献したい」という動機で集まっています。しかし、学群・学年(年齢)・専攻、国籍や言語などの背景は異なります。この多様な彼らが互いに協力しながら、それまで個々に培ってきた力を活かし、学内外における教育支援に取り組んでいます。学生としてさまざまな現場に貢献するこうした取り組みは、まさに本学園モットーの「学而事人」(学んだことを人々や社会のために役立てる)を実践するものといえるでしょう。そこで、本プロジェクトにおける学生の学内外の教育活動への貢献とその活動について、今回から4回シリーズでご紹介していきます。
今回は、世界各国の実物を体験的に活用するアウトリーチ教育プログラムにおける学生の役割です。
 
草の根プロジェクト主催のワークショップにて参加した子どもたちと学生スタッフ

学生は草の根プロジェクトでどんな活動をしているか

アウトリーチ教育プログラムは現在5種類あります。さらに、ワークショップ型のプログラムについては、対象や環境に応じたメニューを多数ご用意しています。まず、エデュケーター(博物館における教育活動の専門スタッフ)がクライアントと打ち合わせをもとに、具体的な活動内容を計画します。その後、学生スタッフとその計画を共有し、実施に必要な準備・トレーニングを学生に行ない、当日を迎えます。ここでは、アウトリーチ教育プログラムの形態によって異なる学生スタッフの役割についてご紹介します。

ワークショップの場合

世界の実物体験ワークショッププログラム
世界の実物体験ワークショッププログラムでは、実物資料を活用したさまざまなアクティビティに学習者が取り組みます。これまで、未就学児から大学生までと幅広い年齢・発達段階の学習者に対応してきました。そこで学生に求められる役割は、ファシリテーター(学習支援者)です。現在、「世界の実物体験ワークショップ・プログラム」は、3つのワークショップメニューを公開しています(3月中に新メニューを公開予定)。これらのワークショップでは、世界のさまざまな実物資料を体験的に活用するアクティビティを4〜8名程度のグループで取り組みます。そのアクティビティは、発達段階や学習者の実態・背景に合わせた課題です。そこで、学生スタッフは学習者間のコミュニケーションを活性化したり、課題解決に向けたチャレンジを促すような問いかけをしたりして、学習者により主体的な参加・体験を促していきます。
グループで話し合いながらコマの回し方を考えます
グループの仲間同士アドバイスしあいながら回します

例えば、本学へ入学したばかりの新入生を対象にワークショップでの働きかけです。世界のさまざまなコマの回し方を考えるアクティビティがあります。そのなかで、グループ内のコミュニケーションを促す声かけや問いかけをするのが、学生スタッフの大切な役割の一つです。学習者は、コマを回す方法を探るとともに、実物のコマを手にすることで、その思考が促されます。そうして得られた気づきをグループ内で共有し、さらに試行錯誤するプロセスがこのワークショップの重要なポイントとなります。しかし、学習者間の関係性の構築が十分でない場合、こうした協働が難しいことも少なくありません。このとき大切なのがファシリテーターである学生スタッフの働きかけです。「どう思う?何か思いついた?」「どうしてそう思ったの?」いったシンプルな問いかけで気づきや考えたことを引き出し、グループ内での共有を促します。さらに、「すごい!そんなこと気づいたんだ!」「えっ、あなたも?!」「ほかのみんなはどう、どう?」といった具合に、学習者たちがより発言しやすくなるよう環境づくりに努めます。ほかにも、アクティビティや学習者に合わせた働きかけでワークショップにおける学びを支援できるよう、日々ファシリテーションの力を研いています。

世界の遊びと衣装の出張博物館

世界の遊びと衣装の出張博物館プログラムでは、地域の多種多様な現場で本プロジェクトが収集した各国の遊び道具や民族衣装を実際に体験することができる空間を「出張博物館」と題して公開します。これは、体験を通じて文化の多様性に触れる機会を社会に提供するものです。ここで学生たちは、展示の設営から終了後の片付けまでに関わります。特に重要なことは、出張博物館に足を運んでくれる「来館者」のみなさんがより深く、より幅広く展示資料を体験できるよう働きかけることです。例えば、手にとって体験できる遊び道具に対し、最初のうちはためらい、なかなか触れずに眺めているような来館者が多く見受けられます。このようなときが学生の出番です。

タイのコマの回し方を説明し、手伝う学生スタッフ

こちらから遊び道具を手渡し、「これどうやって遊ぶと思う?」と声をかけます。すると、そうした声をかけられた方は年齢に関わらず、それまでこわばっていた表情が徐々にほぐれていきます。このように、学生スタッフは展示資料の解説や体験の説明をするだけではありません。来館者一人ひとりに目を配り、気を配り、心を寄せる働きかけをします。興味を引き出すよう問いかけたり、しばらく一緒に遊んだり、遊んでいる様子を見守るなどのサポートをすることで、来館者の体験をより豊かなものになるよう支援するのです。

ボードゲームでは座ってじっくり紹介して、しばらく一緒に遊びます

今回は実物を活用したアウトリーチ教育プログラムにおける学生の活動をご紹介しました。これらの活動には出身を問わず日本人、留学生がともに参加し協力して活動しています。
次回は「国際学生訪問ワークショッププログラム」、「異文化協働体験ワークショッププログラム」をご紹介します。これらのプログラムでは、留学生が貴重な学びのリソースとして活躍しています。異なる文化的背景をもっている彼らがいるからこそ可能な地域貢献といえるでしょう。どうぞご期待ください。

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