【報告】2017年7月12日(水)に「博物館教育論」実物体験ワークショッププログラムを実施しました

7月12日(水)に、桜美林大学で開講されている「博物館教育論」で、世界の実物体験ワークショッププログラムを実施しました。博物館教育論は、博物館学芸員資格を取得する上での必修科目で、担当の石渡尊子先生からのご依頼で2010年度から学期末に実施しています。
博物館教育論では、総合的な学習の時間等における学校と博物館の連携(博学連携)が今日的な課題として取り上げられており、授業では、始めにその実例として草の根プロジェクトのアウトリーチ教育プログラムの紹介をレクチャーで行いました。さらに、実物資料を活用した教育活動の実際を理解しやすいよう、履修者全員を対象に実物を使用したアクティビティを行いました。
前半のレクチャーでは、草の根プロジェクトが持つ教育リソースであるヒト、モノ、チエ・ワザや、それらを教育現場で活用するためのアウトリーチ教育プログラム、さらにモノを用いるプログラムとして特に「世界の実物体験ワークショッププログラム」について詳しく紹介しました。そして後半は、実際にワークショップの中で行なっている、実物を活用したアクティビティを学生に体験してもらいました。
今回行ったのは、世界の多種多様なコマを用いた「触察」と「協働」のアクティビティです。
始めに、全員を3〜4名のグループに分け、各グループに「ファインダー」という役割を受け持つ人を1人決めます。
次に全員がアイマスクをします。それから、各グループに一つずつコマが与えられます(参加者にはコマだということは知らされません)。グループ内でファインダー以外が1人ずつ交代でコマを「触察」します(話をすることも禁止です)。全員がコマを触察した後に、コマは全て集められテーブルの上にランダムに並べます。その後に全員がアイマスクを外します。
それから、触察した人はファインダーに、自分が触れたものに関する情報を伝えます。ファインダーは、グループの仲間から得た情報を頼りに、該当するコマをテーブルに並べられたコマの中から探し出します。
ファインダーは、触察した仲間からの情報をもとに観察して探します。
ファインダーは探し出す時にコマに触れることはできません、またその間にファインダー以外の人はテーブルの反対側を向き、コマを見ることができません。
ファインダーは、仲間から聞いた形や大きさ、感触などの情報をもとにコマを観察して探し出しますが、どれか分からない時にはグループに戻って聞き直したり、自分の考えについて確認したりすることができます。
触察した人は、ファインダーが選び出すまで反対側を向き、物を見ることができません。
このアクティビティは、「世界の実物体験ワークショップP」や「異文化協働体験ワークショップ」でこれまでにも実施しており、今回の授業では約40名の学生を対象に実施しました。ファインダーがコマを選び出した後は、全員で集まり答え合わせです(ここで触察した人も初めてテーブルに並べられたコマを見ることができます)。ファインダー1人ずつに何を選んだのか、なぜ選んだのか聞いていきました。そこで同じグループで触察した仲間も自分たちの情報の伝え方について振り返ります。
ファインダーに1人ずつ選んだ物とその理由を聞いていきます。
その後は、さらにグループごとに触察したコマの回し方を考え、実際に回すことに挑戦します。それぞれのコマは、回し方さえ分かれば練習はほとんど不要ですぐに回すことができます。グループの仲間同士でアイデアを出し合い、試行錯誤しながら取り組みます。このアクティビティでは、実物を材料にした協働的なタスクによってグループ内のコミュニケーションをつくりだします。そのプロセスで客観的、具体的な情報の伝え方や聞き方や他者との関係のつくり方など多くの気づきを促します。また、世界各国のコマに触れ、回し方を考えることでさまざまな側面から多様性に気づくきっかけにもなります。
コマの回し方をグループで考えて回します。
最後にコマの回し方を紹介した後には、実物を活用することによって、参加者にどのようなアクションを促すことができるのか解説しました。学内外の教育現場と連携した草の根プロジェクトによるユニークな教育活動を、レクチャーだけでなく実体験を含めることで理解し、教育現場における実物資料の活用の可能性について考える参考になればと思います。