【活動報告】:対面型ワークショップ〜小人数を対象に実施しています

新型コロナウイルス感染症の流行がはじまって3年。感染の拡大を防ぎながら、本プロジェクトならではの教育支援を継続するため、オンライン会議サービスを活用したアウトリーチ教育プログラムを開発し、その実践に取り組んできました。
これに並行して今年度は、世界の実物体験ワークショッププログラムを限定的に再開しました。依頼を受けた現場へ訪問する人員をエデュケーターのみとし、参加者は最大でも30名程度に絞るとともに、会場の換気や活動中の手指消毒を行いながら実施しています。ここでは、2022年度下半期に地域の教育現場で実施した世界の実物体験ワークショッププログラムの一部をご紹介します。

2022年11月10日(木)神奈川県立相模原中央支援学校

聴覚障害をもつ子どもたち5名を対象に、世界の多種多様なコマの回し方を考え、実際に回すワークショップを実施しました。聴覚障害をもつ参加者を対象に草の根プロジェクトがワークショップを行うのは初めてのことです。ワークショップの内容は、これまで健常者を対象に行ってきたものですが、進行のことばを担任の先生・手話通訳者の方へ事前に提供し、連携しながらワークショップを進めて行きました。私たちにとっても初めての経験のため、実施前には若干の不安もありましたが、現場の先生方の柔軟なサポートと元気いっぱいの子どもたちの積極的な参加のおかげで90分間の授業はあっという間でした。
ワークショップを進行するエデュケーターが発する言葉を(左)と手話で子どもたちに伝える先生
草の根プロジェクトが持ち込んだ世界のコマ
こどもたちにコマの回し方を伝え、回す様子を見守るエデュケーター。

2023年2月12日(日)新宿区立北新宿図書館

参加者を募集して行う公開型のワークショップとして、17名の親子を対象に実施しました。このワークショップも相模原中央支援学校と同様、世界のコマの体験を主題とするプログラムを行いました。こちらは学校とは異なる公開ワークショップで、親子で一緒に参加できるのがとてもよいところです。大人にとっては、コマといえば既知の素朴な遊びで、特に強い関心をかき立てられるものではないかもしれません。しかし、このワークショップを通じて世界の多種多様なコレクションに出会ったことで、子どもとともに大人の方も童心に帰って一緒に楽しむ機会になったようです。
ワークショップ開始時は布をかぶせて、コマを隠しておきます。
必要なタイミングで布を取り去り参加者に見せることで、出会いをより印象的なものにしています。

2023年3月9日(木)横須賀市立走水小学校

今回初めてご依頼をいただいた同校。午前中は低学年のこどもたち計18名、午後は5・6年生計12名を対象に、モンゴル民話「スーホの白い馬」と物語の舞台であるモンゴルをテーマとしたワークショップを実施しました。毎年2〜3月にかけて2年生の国語科で「スーホの白い馬」の学習に入ることから、今年も多くの依頼が寄せられました。そうした依頼に対し、今年度も基本的には草の根オンラインワークショッププログラムで対応してきましたが、同校については生徒数の少ない小規模校であったため、対面での実施を試みました。モンゴルの草原での生活とともに、現代の都市における暮らしについても紹介し、馬頭琴をはじめとしたさまざまな実物資料を体験的に活用することで、物語とともにモンゴルについての理解を深める機会を提供することができました。
教室内に設けたゲル(モンゴルの移動式住居)の模型等の観察コーナー。仕組みがよく分かります。
シャガイ(羊の距骨)は占いやさまざまな遊びに使うことができます。子どもたちに実際に体験してもらいました。
モンゴルの帽子コレクション。実際にかぶり記念写真の撮影も。

やっぱり対面・ハンズ・オンは良い!〜オンラインも活かして広く柔軟に

ここでご紹介した地域における教育支援は、改めて対面で行うワークショップの魅力を実感する機会となりました。 草の根プロジェクトのワークショップでは、ただ実物を触る・使うのではなく、参加者同士がコミュニケーションを交わしながら協働したり、感情を共有したりする場づくりをすることで豊かな学び場とすることを目指しています。それが成功したか否かは「今日ここにきて良かった」、と一人でも多くの参加者が思えるかどうかにかかっていると考えています。

オンライン会議サービスを活用したワークショップにも多くの利点(遠隔地から参加可能であること、カメラを活用し通常とは異なる視点を共有できることなど)がありますが、やはり草の根プロジェクトが持つホンモノの強みは対面でこそ最大限に発揮されます。そうすることによってこそ、参加者一人ひとりに有意義な学びを提供する可能性を最大化できると再確認しました。 今後、対面型の教育支援をコロナ禍以前のような形で再開できることを楽しみにしつつ、ここまで蓄積したオンラインワークショップのチエ・ワザを今後も活かし、より広く柔軟な教育支援に取り組みたいと考えています。