町田市立七国山小学校(2月7日)と町田市立山崎小学校(3月16日)のこどもたちを対象に、オンラインワークショップを実施しました。この2校のワークショップのテーマは「『スーホの白い馬』のモンゴルってどんなところ?」です。(このプログラムの概要やねらいはこちら をご覧ください)
「スーホの白い馬」ご存知の方も多いかと思います。モンゴル民話ですが、日本国内の多くの小学校で使われている光村図書の国語科2学年の教科書に収録されています。2年生の最後の物語文の学習として、もう数十年にもわたって収録されており、位置づけられています。そのせいか、日本では「モンゴルと言えばスーホの白い馬」=「馬頭琴」「馬」「大草原」というイメージが幅広い世代の人々に定着しています。
このようなモンゴルやモンゴルの人々に対して多くの人が共有するイメージは「ステレオタイプ」といいます。そのステレオタイプが影響しているせいか、お問合せや打合せでは「本物の馬頭琴ですか!モンゴルの学生さんもいるんですか!それでは、馬頭琴を演奏してくださるのですね」といった期待の声が寄せられます。残念ながら、きれいな民族服をまとって馬頭琴の美しい演奏を披露するようなプログラムのご用意はありません。モンゴルの学生にとっても、馬頭琴はとても特別な伝統楽器で、誰もが当たり前に持ち、演奏できるものではないのです。もし人前で演奏会ができるような学生に出会えたとしたら、それは非常にまれでラッキーなことでしょう。
私たち草の根プロジェクトは、ある国・地域やそこに暮らす人々に抱くステレオタイプや自身のあたり前を崩し、他者理解を進めるお手伝いができればと考えています。こどもたちの発達段階や現場での学習につながりをもったプログラムを開発しています。さまざまな本物の資料を持っているからこその学び、人格を持った今を共に生きる人と出会うからこその学び、ホンモノから学ぶとはどういうことかを理解しているからこその学び。そのようなプログラムで私たちはみなさんの教室での学びをさらに豊かなものにするお手伝いをしています。
2月7日(月)七国山小学校 (6学級・約200名+教職員)
町田市立小・中学校62校には「学校支援ボランティアコーディネーター(以下、VC)」という学校内外をつなぐスタッフが配置されています。今回、七国山小学校での授業が実現したのは、同校のVCさんがきっかけです。本プロジェクトのホームページを見つけられ、メールでお問合せをいただきました。 このようなデジタルツールの活用の動き、驚かれる方もいるかもしれませんが、私たちはこのコロナ禍の2年で一気に進んだように感じています。
2000年代以降はさまざまな現場でコンピューターやインターネットなどICTの普及しましたが、コロナ禍以前は学校教育の現場とのやりとりはアナログが主流でした。電話や対面で直接お話をしたり、FAXや郵便でお知らせを送受信していました。本プロジェクトでは、活動開始以来、定期的にニュースレターを発行していますが、市内小中学校には
今でも紙媒体でお送りしています。ペーパーレス化が進められる一方で、アクセシビリティの観点から、私たちはお問合せやご依頼をいただく学外の現場の特徴・事情に合わせて対応をしてきました。 教育支援のきっかけとなる情報が当事者の方々の手に届いてこそ、こうした連携による学びづくりは一歩を踏み出すことができます。
日本とモンゴルから「こんにちは」
一人はすでに日本にいて町田キャンパスで学んでいるノミンさん(LA学群3年)。コロナ禍以前にはエデュケーターと共に小学校を訪問して対面型のワークショップを経験してきました。もう一人は、モンゴル在住のウンドラルさん(LA学群2年)。来日できる日を待ち、自宅から学業に励みながら、本プロジェクトの活動にはオンラインで参加してくれてきました。
3年生も一緒に!去年の今をとりもどそう!
「昨年度この学習ができなかった現3年生のこどもたちも一緒に」打合せでご相談いただきました。2020年度末から始まったコロナ禍。現3年生といえば、小学校生活にようやく慣れた1年生の終わりから、数カ月間の休校(家庭学習)期間を経て、2年目の小学校生活が始められた学年です。学校での授業再開後も、さまざまな体験型の学習活動や行事などが思い切りできなかったことが想像できます。そこで、特別支援学級も含む2・3年生6学級(約200名)とZOOMでつながり、みんなで活動することができました。
3月16日(水)山崎小学校(2学級・約60名+教職員2名)
山崎小学校のVCさんが七国山小VCさんより先日の授業のことをお聞きになったことで、今回ご依頼いただきました。VCさんたちの横のつながりがこどもたち・先生方に学びのチャンスを生み出したのです。やはりアナログの人的ネットワークが鍵となる現場です。
現地から「こんにちは」卒業生の協力
この日は、本学卒業生がモンゴル・ウランバートルよりリアルタイムで参加してくれました。彼は来日してキャンパス生活が始まると同時に、私たち草の根プロジェクトの仲間に加わり、卒業まで4年間メンバーとして精力的に活動してくれていました。そんな彼も今では学校教員として頑張っていますが、2校目の急きょ参加してくれることになりました。今回は特別でラッキーな回だったわけです。
しかし、実は、今回の彼のように卒業・終了した元留学生メンバーの多くが「ぜひワークショップに参加したい!協力したい!」といってくれているのです。これはZoomのようなオンライン会議ツールが普及し、活用した活動ができる環境が整ってきたからこそのことです。国・地域によっては大きな時差があるものの、リアルタイムで顔を会わせて言葉を交わせることができるようになったことで生まれる、新しい交流・学びのチャンスが生まれました。これは、学習対象者である子どもたちや教職員・保護者だけでなく、帰国した本学卒業生・修了生にとっても学び直し(unlearning)やふりかえりの機会となります。こうしてみると、本プロジェクトが学びを届けているのは、多様な人たちであることといえるでしょう。