【報告】新しいワークショップで応援!武蔵野市の子どもたちにオンラインワークショップを実施しました:2020年11月14・28日(土)

地球規模の難題に立ち向かい続け、気づけば木々の葉が色づき、冷たい空気を感じる季節になりました。冬を迎える北半球に暮らす私たちにとって、いま一度気を引き締め、皆でこの未曾有の事態を乗り越えていかなければなりません。まさにグローバルな課題にどう向き合い、どう協働するかという力が問われているのではないでしょうか。

さて、今回のアウトリーチの現場は、東京都武蔵野市にある武蔵野プレイスの「世界を知る会ジュニア」という講座です。大変な時期にある今年は、オンライン・システムを活用した新しい試みです。また、対象は小学校低学年の子どもと保護者(両日とも10組20名)としました。この親子対象という方法も、同講座では初の試みです。

今回は留学生メンバー4名が2日間のワークショップに登場しました(健康福祉学群4年・香港/LA3年・中国/LA2年・モンゴル/LA1年・モンゴル)。なかには母国の自宅から参加したメンバーもおり、参加者は「空間も時間も飛び越えてつながった!」というワクワクを体験できたのではないでしょうか。

同館は多様な年齢や背景の市民に学びの場・機会を提供する複合型の生涯学習施設です。約20年前、学校5日制となったことを受け、学校のない土曜日に子どもたちを対象とした講座が開かれています。学校以外における子どもたちの学びと育ちを支えようと、さまざまな分野やテーマの講座が企画され、近隣地域の大学や団体などが講師として協力しています。私たち草の根プロジェクトもその一端を担い、早いもので17年目となりました。初めて実施した2003年度より大変好評で、いつも定員を大幅に超える申し込みがあり、やむなく抽選が行われるほどです。そこで、「より多くの子どもが参加できるように」との要望を受け、本プロジェクトではある時期より2日間クラスを設け、多くの武蔵野市の子どもたちに学びを届けてきました。

「あたりまえ」から飛び出てみたら

これまで「あたりまえ」であった物事がそうでなくなりました。草の根プロジェクトで言えば、これまでは、ヒト(プロジェクトの学生や教職員=人的リソース)と学習者が直に出会い、ふれ合い、語り合い、協働するアクティビティ、所有するハンズ・オン(実際に手にとり体験することができる展示方法)の実物資料をおおいに活用した学習者主体の体験重視のアクティビティを、さまざまな現場で展開してきました。このようなあたりまえの形が、現状では、安心・安全を脅かすものとなってしまいました。

しかし、こんなときだからこそ、このあたりまえに改めて目を向け、いろいろな問い直しをする絶好のチャンスではないかと考えました。これまでは、あたりまえの範囲内でアイデアを生み出し、試行錯誤していました。そのあたりまえがそうでなくなったということは、あたりまえの範囲を形成していたものが崩れたということです。それまでは考えもしなかったような「こんなことができるだろう!」「こんなことをやってみたらどうだろう?!」と、チャレンジングなアイデアが次々に浮かび、可能性が広がっていきます。

見直してみよう「聴く」

私たち草の根プロジェクトの学びづくりの柱にあるのは「聴く」ということです。聴く力は、異なる他者への理解、そして相互理解を支えるのに不可欠な力です。相手に誠意を持って向き合い、相手の思いや考えをありのままに正しく受け止めることです。ことばで表現されていることはもちろんですが、声や表情や動きなどことば以外のものからも、相手の思いや考えを読み取り、読み解くことで、関係性づくりは始まります。自分が伝える側にあっても「聴く」力を働かせることで、どのようにして自分の思いや考えを相手に届けたらよいかを考えることができます。つまり、「聴く」とは、聴覚だけでなく視覚も(時にはその他の感覚も)思考も総動員させる、協働的な対話の土台といえるでしょう。

草の根プロジェクトではいつも学生たちに対し、どんなプログラムでもどんな役割でも、「聴く」実践者として学習者(参加者・来場者)と関わることを促し、みんなで努力しています。今回は、場(空気)を共にしない遠隔の環境下で、しかも限られた画面越しの対面です。それは、なかなか容易なことではありません。 まずは基本の「大きな声で ゆっくり はっきり!」「笑顔で 参加者を見つめよう」 に立ち返り、それをいつもの10倍で頑張ってみようと取り組みました。これを受け、ワークショップに参加した子どもたちも保護者と共に、うなづいたりあいずちを打ちながら聴く姿、拍手や挙手で思いを表現する姿などがしっかり確認できました。留学生が話し、伝えようとしてる内容はもちろんのことですが、プログラムを通じて親子に伝えようとしている「聴く」が届いた感触を得ることができました。

草の根プロジェクトの学生たちの協働

当日ワークショップに参加するのは、今回は留学生メンバーだけでした。しかし、実は、日本人学生もプロジェクトのメンバーとして事前研修(ミーティング)やリハーサルに参加し、一緒にワークショップをつくり上げてくれました。日本人学生メンバーには、ワークショップの参加者である小学校低学年の子どもと保護者の両方の視点で、リハーサルに参加してもらいました。画面越しだと、どう見えるか、聞こえるか、どのような印象かというヒントを与えてもらいました。このような活動は、ワークショップで実際に活動した留学生メンバーの学びになるだけではなく、日本人学生にとっても貴重な自己開発の機会だと思います。例えば、自分とは異なる年齢・発達段階や立場の人の視点に立って思考する他者意識、自己を客観視・俯瞰する力などを育てるでしょう。これらは、本プロジェクトが大切な学びづくりの柱としてしている「聴く」力にも通ずるものだと考えます。

今回のワークショップを実施するにあたり、学生たちは1カ月半ほどをかけて、準備・練習を積み重ねてきました。 秋学期が始まってしばらくした頃、プロジェクトに参加している学生メンバーみんなでオンライン・ミーティングを開きました。久しぶりのメンバーとの再会と仲間入りした新メンバーとの出会い。キャンパスに通い、日常的に学生メンバーが集まり、定期的に学内外のさまざまな現場でアウトリーチ教育にみんなで取り組んでいると、学生間の関係性が自然に醸成されていきます。しかし、今は国内外の異なる地域・環境からそれぞれ大学生活を送っているため、関係性を育てる場・機会を意図的につくる工夫や努力が必要です。 学生たちの間には戸惑いや大変さもあったと思いますが、みんな前向きにそれぞれができることをして、活動に参画してくれたように思います。


新しい「ひきだし」を増やそう

今回の実践を通して、子どもたちと聴くことの大切さを学び合うこと、他者/相互理解のために協働することは、リアルな対面による交流ではないかたち・方法でもチャレンジできると考えました。 今回のワークショップ、そして、前回7月に実施した東京・青梅市の児童生徒を対象にしたオンライン・ワークショップは、現在の社会的状況への対応策として一時的なものではなく、本プロジェクトのアウトリーチ教育プログラムの新しいひきだしとして、今後もさらに試行錯誤しながらよいものに育てていこうと考えています。

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