聴いてみよう!留学生のライフヒストリー
青梅市国際理解講座における2回シリーズのオンラインワークショップ。2回目の7月25日、留学生メンバーの登場です。この日は5名の留学生(ビジネスマネジメント学群4年:台湾、グローバルコミュニケーション学群4年:香港、健康福祉学群4年:香港、リベラルアーツ学群4年:中国、交換留学生:中国)が参加しました。 異例の学習形態・環境で春学期を乗り越えた学生たちが初のオンラインのワークショップに臨みました。これまで現場訪問の実績が多い学生もいれば、経験が浅い学生や初参加の学生もいました。事前のミーティングや研修、個人練習を経たメンバー5名で2つのクラスを担当し、子どもたちの学びの大きなリソースとなりました。
前回学んだことをふりかえりつつ、留学生と共有することから活動をはじめました。画面越しの子どもたちは、教室に一定の間隔をあけて集合しているため、一人一人の表情や動きはとらえづらく、あいずちや返事などの音声も十分に受け止めることはできません。だからこそ、そこに学びの種があります。「いつもより大きくアクションして!」 子どもたちにそう伝えました。 最初のうちはおとなしく座っているだけで、どこか傍観者のような子どもたちも、徐々に大きく手を振ったり、声をあげて反応したりするように変わっていきました。現場の先生も子どもたちの言動を即座に拾い上げ、マイクを持って会場内を駆け巡り、子どもたちと私たちのつなぎ手として奮闘してくださいました。まさに、みんなの足し算と掛け算、「聴く」と「協働」です。
一方、学生たちは、画面越しにファシリテーターの進行に注意深く耳を傾け、プログラムのねらいや自らのリソースとしての意義や役割を考え、それぞれの自宅から参加していました。画面に小さく映る大勢の子どもたちを置き去りにしないよう、しっかりその様子を見ながら語りかけます。画面上で伝えられる最大限のものを伝えるために、皆で心がけたことは2つです。大きな声でゆっくりはっきりと伝えること、表情や身ぶり・手ぶりもいつも以上に大きく添えて伝えること。留学生は、単なる異文化・異言語のアイコン的存在ではなく、言語・非言語コミュニケーションのツールを上手に使って伝えるモデルとしての役割も担っているからです。初めてのオンラインワークショップということで、多少の緊張はあったものの、笑顔とや優しいまなざしを絶やすことなく、この日も学びづくりに貢献してくれました。
日本が大好きで来日した彼らが、日本での生活をはじめると数々のカルチャーショックに出会います。これまでに出会った驚きや疑問、感激の体験談を全員参加のクイズ形式で紹介します。留学生の日本でのカルチャーショック体験談を通じ、子どもたちは文化について学びます。なんとなく伝統的で特別なものを文化だととらえている場合が多いですが、そのようなものばかりが文化というのではなく、日常生活にあるごく身近なものも文化であり、言い換えれば自分たちの「当たり前」であると、子どもたちは知ります。そして、自分の当たり前(=自文化)は、別の当たり前(=異文化)からみると、とても素晴らしと感激するものであったり、不思議に感じるものであったり、奇妙なものだと受け入れがたいことであったりする。ひとつの当たり前が唯一絶対の当たり前でないということを、子どもたちは留学生たちの語りから気づかされるのです。
このような気づきや理解の発展として、日本、あるいは自分たちの暮らす地域のなかにも多様な人々が生活しており、たくさんの当たり前があるのだと、多文化共生社会に生きていることにも触れます。すると、「きっとカルチャーショックを受けながら生活している人もいるのだろう」とか「もしかしたら、自分の当たり前を押し付けてしまっているのかもしれない」と振り返る学びにもつながっていきます。本プロジェクトが行っている留学生との交流するプログラムでは、このような足元にも目を向けるグローカル(glocal)な学びにも貢献するものになっています。
また、留学生が生まれ育ってきたなかで出会った「日本」を聴くことは、子どもたちにとって、他者の視点から自分たちの生きる日本を見つめることになります。自文化の再発見です。留学生の多くは、日本のアニメや漫画、ゲームから日本に興味を持ち、夢中になっていくといいます。そのなかで、日本語を自分なりに学び、さらに日本や日本人・日本社会への理解を深めたいという思いで留学を決意します。そのような一人一人のライフヒストリーを聴くことは、世界とのつながりやグローバル社会を理解する糸口となります。
知恵と技を組み合わせる
私たち草の根プロジェクトのリソースのなかに、知的リソースとして「チエ・ワザ」があります。これは、プロジェクトとしての教育・研究活動の積み重ねによって育ててきたものだけでなく、プロジェクトに関わる教職員や学生個々が持っているものもあります。このような知的リソースは、様々な現場や組織にもそれぞれ有するものです。知的リソースも十人十色、人や現場・組織それぞれにあるでしょう。異なる知的リソース、つまり多様な知恵や技を持ち寄り、議論し、共に吟味することはたやすいことではありませんが、きっと新たなリソースやエネルギーが生まれるはずです。それが今回の初めてのオンラインワークショップから思うことです。
子どもたちと留学生の頑張り、青梅市の講座関係者のお力添え、すべてが重なり、2日目の活動も無事に終了することができました。青梅市教育委員会の関係者のみなさん、また参加してくれた児童・生徒のみなさんにあらためて感謝いたします。 草の根プロジェクトでは、今後さらにオンラインワークショップのプログラム開発に取り組んでいきたいと考えています。