【報告】2019年12月11日(水)に町田市立武蔵岡中学校で国際学生訪問ワークショッププログラムを実施しました

対象・現場に応じた学びづくり

同校では10年以上にわたり、このワークショップを実施しています。同校の毎年恒例の学校行事として位置づけられています。3学年とも小学校からずっと単級で育っており、全校生徒と先生方をあわせても100名に満たない小さな学校です。そのため、子どもたちは多くを語らずとも、真に耳を傾けなくても、おおよそ事が足りてしまうような、そんな関係性ができあがっている集団です。とても素敵な仲間・環境ですが、それは今だけです。中学を巣立ち、生きる世界を広げていく子どもたちが、自分とは異なる他者と互いを思いやり、心から耳を傾け、一人ひとりがもっと積極的に深く集団に参画・協働する力を、同校では育まなければならないのです。そんな学びの機会・場となるようにと、同校の先生とは今でも毎年打合せを行い、綿密に情報交換し、全校態勢でこの学びづくりに取り組んでいます。

当日草の根プロジェクトでも練習してから出発しました。

学びの主体はこどもと学生

今回の訪問は留学生メンバー1名。エデュケーターと留学生1名とで全校生徒・先生方、計90名ほどを対象にワークショップを実施したのです。このスタイル、留学生のライフヒストリーから学ぶことをねらいとした国際学生訪問ワークショップのメニューのひとつで、昨年度に同校で実施して大変好評でしたので、今回もぜひそうしようということで、同校の先生と相談しました。「留学生がたった一人で交流会?!そんなことができるのだろうか」そう疑問に思われる方もいるかもしれません。しかし、留学生が何人であっても、子どもたちが学びの主体として活動へ参加し、協働的な学びの空間をつくることはできます。「学びの主体は子どもたち」これが私たちの学びづくりの基本です。

鴛鴦茶は紅茶と何をまぜたもの?というクイズに答える中学生。

この日、参加した留学生の経験や学び、彼の持つさまざまな力(日本語力、子どもたちと関わる力、学びづくりのアイデアや実践力など)や性格などを活かしつつ、それを同校の子どもたちの学びや成長にどう活かし、還元できるか。このような考えのもと、学びのデザインをすることができるのが、私たち草の根プロジェクトのチエ・ワザ、つまり知的リソースです。同校の先生との打合せ後、エデュケーターがワークショップデザインを行い、訪問する留学生と1カ月以上の時間をかけて形にしました。学生にとっては、多くの授業や難しい課題など大学生活との両立をはかりながらの課外活動です。今回は、エデュケーターの教職員とスケジュール調整のために、時には6限の授業を終えてから遅くまで練習したことも・・・! エデュケーターの支援を得ながら、自宅での個人練習も必死にしてくれました。このように実施側の取り組みの過程をみると、草の根プロジェクトにおける学びの主体は学生たちです。

草の根プロジェクトの「学びや育ちの種まき」

「学校教育の一部分を託されている以上、責任をもって学びづくりをしなければならない。そのためには、できるかぎりの最大限の努力でもって、みんなで協働する。子どもたちの今しかないその時に、草の根プロジェクトだからこそできる『学びや育ちの種まき』をしよう」それが、本プロジェクトが留学生を含む、すべての学生メンバーに理解共有を徹底していることです。大げさで厳しいようにも聞こえるかもしれませんが、学生がこのような心がまえを持つことで、誰かの学びや育ち、そして人生に自分が携わるということを認識し、その意味の大きさや素晴らしさを考えてほしいというねらいのためです。また、それと同時に、学生たちが自らの取り組みに誇りや自信を持ち、自らも学び育ってほしいという願いがあります。

留学生が伝えたかったこと

このパートでは特に集中して話を聴いてくれました。

「人は何にでもなれる!そして、『遅い』なんてことはない!」これは、この日の留学生が最後に子どもたちへ伝えたことです。「中高生の頃の僕は自分のことを『出来損ない』だと思っていた。でも、今はそんなふうに思わない。『やればできる』そんなふうに自分のことを思っている」これまでの歩みをふりかえり、彼がいま心から思うことを、子どもたちへありのままに、そして自分のことばで熱く語りました。それまでは何となく他人事のようにいた子どもも、また単純に未知の異文化のお話を楽しんで聞いていた子どもや先生方も、そこにいる全員の真剣なまなざしが彼に注がれました。「僕はみんなの生活や人生の通りすがりの一人です。だから、ここにいる全員の心に僕のことばが届かないかもしれません。でも、少しでも何かを感じたり、自分のことを見つめたりするきっかけになれば、僕が今日ここへ来たかいがあったかなと思います」

ワークショプを終えて、ゆくのき学園の校門にて。

ワークショップを終え、キャンパスに戻る帰り道。「今日の活動どうだった?頑張れましたか?そのかい、あったかな」 彼に尋ねてみました。 「絶対だれかに勧めたいですよ!絶対みんなやるべきです!がんばってよかったです!かいがありました」緊張から解放されたこともあり、清々しく達成感に満ちあふれた面持ちで答えてくれました。 忙しい中で時間を作っては何度もミーティングを重ね、なかなかプログラムデザインが進まなかったこと、 思うように話せないで悩んだこと、遅くまで練習に励んだ苦労や疲れなど、すべてが報われたように思いました。

多文化共生の社会に根ざした学び

「ひとりの人間としてその人を見つめ、どのような環境や状況で、どのような経験や学びを経て、どのようなことを感じ、考え、生きてきたか、いま生きている人であるか。そのようなことを受け取り、自分は何を考えるか。自分自身に置き換え、自分自身を見つめてみる」 国・地域を超え、日本人か外国人かといった立場を超え、人間としてどう生きるかを共に考えるこのようなテーマは、従来行われている国・地域を知る国際交流よりも、より多文化共生時代の今日の社会に根ざした学びとなるのではないかと考えます。