【報告】1/20(日)橋本子どもまつり(相模原市立橋本公民館)で世界の遊びと衣装の出張博物館を開催しました

公民館とは地域住民が主体の学びの拠点です。その機能・役割は「つどう・まなぶ・つながる」ということばで表されます。自分の学びや生活・人生、また自分の暮らす地域をよりよく豊かなものにするために、人々が集い、つながるところです。 草の根プロジェクトは、これまで各地の公民館に協力・連携し、その3つのコンセプトの活性化に貢献してきました。

相模原市は日本のなかでも公民館活動が大変盛んな地域です。同市内にある公民館は現在32館。各館では地域性や住民の意見などを活かし、それぞれ特色ある館活動が展開されています。今回、私たちが出向いたのは相模原市立橋本公民館の「第36回橋本子どもまつり」です。このおまつりは子どもたちが主役の行事で、同館が力を入れる事業のひとつだそうです。私たちは第30回(2012年度)より、世界の遊びと衣装の出張博物館を出展するかたちで、同館とおまつりを企画して・実施・参加する子どもたちたちを応援してきました。

奥からインドネシア、ガーナのマンカラ、インドのレーシングクラウンで遊ぶ子どもたちと学生スタッフ

草の根プロジェクトの出張博物館会場は館内の奥にある部屋なのですが、例年、開会から閉会まで来場者が絶えることはありません。オープン前から待ちきれずやってくる子、何度も何度も訪れる子、長い時間過ごす子、閉会してもなお夢中に遊び続ける子。いろいろな子どもたちでいっぱいです。多くは小学生ですが、未就学児やよちよち歩きの子ども、その保護者も少なくありません。何軒かで一緒にやってくる親子もいれば、親子三代で楽しむおじいちゃん・おばあちゃんの姿も。草の根プロジェクトの出張博物館は、年代・年齢を問わず、多くの人たちが集う遊び場であり、みんなの学び場です。

「学びの場?遊んでいるのに??」

韓国のすごろく「ユンノリ 」の遊び方を説明する留学生スタッフ

人が学ぶとはどういうことなのでしょうか。「学び」とは、人間なら誰もが持つ「〜たい」という望みを追求する思考や行動です。人間本来の自然な営みです。「学習」とは、経験によって生じる思考や行動の変化です。やってみて「わかる」「できる」ようになるといったこと、そこで得られた結果から生まれる様々な感情や気づきなどです。私たち人間の学びや学習は生まれた瞬間から始まり、私たちはその積み重ねで生きています。その学びと学習は、身近な大人や年長者たちとのふれあいから出発します。そこには遊びの要素がたくさん見られます。人の学びは遊びから始まります。

草の根プロジェクトの出張博物館では、世界各地の多種多様なこまやけん玉、すごろくやマンカラのようなボードゲーム、たくさんの遊び道具を、実際に手に取って楽しんでもらっています。家族や友だちと楽しむその光景は、まるで家でのびのびと遊んでいるかのようです。また、さまざまな民族服や帽子などの試着では、照れながらも嬉しそうな顔、高揚感に満ちた弾ける笑顔。たくさんの感情体験がそこにはあります。いつもと違う自分に変身したような、そんな気分なのかもしれません。これはごっこ遊びにも似た体験でしょう。

子どもたちと一緒に訪れる親や祖父母のみなさんにとっても、未知のもの・ことに出会ったり、自身の世界を広げたりする機会であるようです。「こまもけん玉も世界中にいろいろあるんですね!日本にしかない日本のものかと思っていました」「けん玉と言ったらあのけん玉、こまと言ったらあのこま。そう思っていたけど、世界は広いなぁ。」自分の知っていることや考えていることが覆されたという新鮮な気づきがたくさん聞かれます。また、いつもとちょっと違う子どもや孫の新たな一面に気づかれる方もいます。私たちの出張博物館は、さまざまな発見に満ちあふれた学びの場・機会となっています。

出張博物館は子どもも大人も一緒に楽しみ、遊びを通じて多様性に触れて学ぶ場です。

草の根プロジェクトの出張博物館は、 めずらしい遊び道具や衣服がたくさん持っていき、きれいに並べ、訪れた人々に自由に楽しんでもらう場(機会)を、 各地に出かけて提供しているだけのように見えるかもしれません。しかし、その土台には、人間の学習や発達の理論にもとづく草の根プロジェクトの学びづくりのチエ・ワザがあります。多様な人々の多様な学びや学習、つまり「知」に応え得る学びの場となるよう綿密にデザインした教育活動の手法のひとつです。 これは、モノ(資料)を知り尽くし、現実の現場や人々との関わりあいと教育・研究活動の積み重ねによって蓄積した学びづくりのチエ・ワザを具現化したものです。

「つどう・まなぶ・つながる」公民館。人々のつながりが生み出され、地域の絆が強化されるだけでなく、人々が新たな自分や「知」とつながる学びの拠点です。草の根プロジェクトは、地域に根づき、人々の手によって活動する各公民館をこれからも支援していきます。