本プロジェクトは、桜美林大学からほど近い町田市立山崎小学校の教職員のみなさんとともに、これまでさまざまなアウトリーチ教育プログラムを実践してきました。国際学生訪問授業プログラムをはじめ、世界の実物体験ワークショッププログラムの草創期の取り組みなどは10年以上前からになります。2013年度からは、ほぼ毎年6年生の総合的な学習の時間に世界のさまざまな楽器を活用した国際理解のワークショップを実施しています。この日はエデュケーター2名と学生スタッフ4名の計6名で6年生2クラスを対象にワークショップそれぞれ実施しました。
この日は、二つのアクティビティを通じて世界の楽器を体験することで、自分たちが考える「楽器」の範疇の外にある楽器があるということを実感し、文化の多様性に気づきくことを目標としました。
アクティビティ①「音で探そう世界の楽器クイズ」
上記の写真にあるように、部屋の中央に多種多様な楽器を約20点を置き、布で隠してあります。子どもたちは全員部屋の外側を向き、目を閉じます。その状態でエデュケーターがある楽器をひとつ取り出し、1~2分音を鳴らします。
その後、再び楽器を隠し、子どもたちに再び部屋の中央に向き、目を開けるよう伝えます。ここで楽器を覆っていた布を取り去り、はじめて子どもたちに楽器を見せます。そして、今、聞いた音の正体はどの楽器かと問いかけ、楽器には触れずに探し出すよう伝えます。すると、子どもたちはじっくりと楽器を観察し、周りの友達と相談し始めます。そうした時間をしばらく取った後、一つの楽器に絞り込み、エデュケーターの合図で子どもたちは選んだ楽器を指し示します。
子どもたちが予想した楽器を全て取り出し、正解発表をします。今回のクイズの答えは、インドの「コモク」と呼ばれる楽器でした。2クラスともコモクを選び出してくれました。続いて、コモクをどのように使ったら、先ほど聞いた音を出すことができるのかと問いかけ、子どもたちから出される奏法のアイデアをエデュケーターが実際に試します。ここで、試行錯誤を重ねながら、コモクの形や仕組みを改めて共有し、音の出し方を紹介しました。コモクは、円筒形の筒に張られた皮に固定された弦を引っ張りながら弾いて音を出します。
次は、コモクだけでなく、楽器をじっくり観察し、多種多様な楽器を鳴らす時間です。子どもたちは、それぞれの興味関心に応じて自由に楽器を体験します。音を頼りに楽器を探し出す過程で、じっくりと観察した際に気になった楽器を実際に手に取り、音を出します。「分からないこと」や「気になったこと」は、本プロジェクトのスタッフへ尋ねてみること、そして楽器を優しく扱うことを伝えてから楽器を体験する自由時間の始まりです。
コモクと同じように、音の出し方がすぐに分からない楽器はほかにもあります。そうした場合には、子どもたちにどうすればいいのか試行錯誤を促す問いかけをしたうえで、音の出し方を紹介し、その方法を実際に体験してもらいます。
アクティビティ②インドネシアの「アンクルン」の合奏
続いては、音を出してみるというだけではなく、子どもたちに合奏を体験してもらいました。使用する楽器はインドネシアの「アンクルン」で、曲は「ドレミの歌」です。アンクルンは、ユネスコの世界無形文化遺産に指定されており、インドネシアの学校教育でも使われています。縦横に組み合わされた竹の枠組みに、2~4本の竹筒が直立した状態でつるされています。枠の中心を軸にして左右に振ると、直立した竹筒と底部の竹筒とがあたって音が鳴るしくみになっています。アンクルン一つひとつには、「ド、レ、ミ・・・」と音階があります。グループで分担して合奏することもできれば、専用の台座に架けて一人で演奏することもできます。
今回は、クラスを4グループにわけ、各グループに1オクターブ分のアンクルンのセットを渡しました。この時点では音の出し方や合奏の方法は説明せず、まずは子どもたちに実物を手にしながら、それらについて試行錯誤してもらいました。グループには一人ずつ学生スタッフがファシリテーターとして入り、アドバイスをしながら合奏に取り組みました。子どもたちは、最初は困惑しつつも、実際に音を出しながら相談し、練習することで徐々に手応えを感じているように見えました。最後は全員で合奏です。短い時間でしたが、どちらのクラスも見事な合奏を披露してくれました。
今回は、楽器を活用した2つのアクティビティで構成したワークショップを実施しました。どちらのアクティビティも、楽器を体験的に活用するための「問いかけ」によって子どもたちの活動を促していきます。こうしたワークショップは、ハンズ・オンで実物資料を教育的に活用する本プロジェクトならではのものです。普段、手にする機会が少ない多種多様な楽器に触れ、一人ひとりが世界の広さや文化の多様性に気づくひとつのきっかけになることを願っています。