【報告】国際学生訪問ワークショップP - 相模原・町田市内小中学校

学校教育の現場では、大きな行事を終えた10月から12月までのこの時期、通常の教室授業ではなかなか取り組めないプロジェクト型の学習活動や特別活動に取り組むことが多く見られます。総合的な学習の時間における国際理解教育もそのひとつで、草の根プロジェクトにもさまざまなお問合せやご依頼をいただきます。

12月8日(金)に町田市立町田第三小学校で実施した国際学生訪問ワークショッププログラムにて。留学生と子どもたちがじゃんけん。

そこで、この2ヶ月間に留学生と共に訪れた小中学校3校での「国際学生訪問ワークショップ」についてご報告します。言語・文化的背景が異なる留学生との交流を通じ、「聴く」ことと「協働」することの大切さを学ぶことが、このプログラムのねらいです。これらは、自分とは異なる他者との相互理解(国際理解や異文化理解)、そして共生に欠かすことのできない力です。本プログラムにおいて留学生が果たす役割は、英語をはじめとする外国語の指導、母国紹介や伝統芸能の披露のようなものではないというのが大きな特徴といえます。

11/22(水)相模原市立富士見小学校3年生

相模原市立富士見小学校にて。グー、チョキ、パーでクイズに答える子どもたち。

小学校3年生になると、総合的な学習の時間が始まります。同校では、3年生の総合的な学習の時間で取り組む活動のひとつに国際理解教育が位置づけられているそうです。今年度も3年生の子どもたちは、各自で興味の歩くに・気になる国を選び、図書資料やインターネットを活用して、1学期より調べ学習に取り組んできたそうです。

この日は、マレーシア、台湾、韓国の学生と訪問しました。「聴く」ことを頑張ると意識を持った子どもたちに、各国の文化についてさまざまなカテゴリーでクイズ形式で紹介していきます。同校は相模原市内でも外国につながる児童が多く在籍するグローバルな学校です。活動は「やさしい日本語」で行います。日本の子も外国につながる子も、活発な子もおとなしい子も、子どもも先生も、みんなが平等に自分の考えを表明できるような楽しい工夫のあるアクティビティです。

練習問題やテストなどの採点のいろいろな印(まるつけ)、1から10までの指を遣った表し方、じゃんけんなど、さまざまな「小さな文化」を見つけ、比較をしてみました。まるつけの印の違いには、子どもたちも先生方も目を丸くして興味津々な様子でした。また、じゃんけんはとても盛り上がりました。興味・関心や驚きなど、子どもたちのひとつひとつの反応の積み重ねで、ワークショップはできあがります。それを支えるのは、学級担任の先生方の参加です。先生方は子どもたちの学びのモデルとなります。この日の3名の留学生は、とても生き生きとした子どもたちの表情や言葉のリアクションに非常に感激し、喜んでいました。

12/6(水)町田市立小中一貫ゆくのき学園(武蔵岡中学校全校行事「国際交流会」) http://www.machida-tky.ed.jp/j-musashioka/musashi_top.html

町田市立武蔵岡中学校にて。体育館をいっぱいに使ってワークショップを行いました。

同校での訪問ワークショップは、10年以上にわたって継続して実施しています。特別なイベントとして終わってしまうことなく、生徒にとっても留学生にとっても、そして教師にとっても有意義な学びとなるよう、同校の先生方とは交流のあり方について意見交換を重ね、試行錯誤しながら取り組んできました。

同校は3学年全生徒と先生方をあわせても100名に満たない小さな集団です。だからこそ、皆が互いを熟知し、できあがっている関係性や共有するものがあります。それは、自分たちのあたり前であり、つまり「文化」とも言い換えることができます。多くを語らなくても事が足りてしまう「以心伝心」の関係もすばらしいですが、それは今だけです。これから中学を巣立ち、どんどん生きる世界を広げていく子どもたちが、耳を傾けること、ひとりひとりがもっと参画して協働すること、自分たちのあたり前に気づくこと。そんな学びの機会・場になるようにと、同校の担当の先生と毎年欠かさず打合せを行い、すべての先生方にも共有していただき、全校態勢で取り組んでいます。

クイズのアクティビティは、留学生の母国の紹介にとどまらず、留学生の体験したカルチャーショックから日本を見つめたり、学校にかかわる比較文化を通じて身近な自文化・異文化に気づいたりと、さまざまな観点から多様性を学びます。また、今回は、同校の生徒と先生の年代・世代間や出身地域などで文化差が見られるといった、日本や日本人のなかの多様性にも気づくアクティビティも試みました。先生方の間にも差異が見られ、体育館中に驚きの声が響き渡りました。何でも知っているつもりでも、知らないことはまだまだたくさんあるんだと、気づいてもらえたようです。

同校では、例年、ワークショップの締めくくりとして、生徒と先生方とで学園歌を歌います。日本の学校では、大きな行事のときぐらいにしか校歌を歌う機会はないと思いますが、とても上手に声をそろえて全校で歌うことができます。それは、海外の学生からすると大変すばらしい、日本人の精神とも言える「協力」の象徴であると言います。また、校歌とは、唯一無二のその学校の文化です。そのようなことをお伝えし、数年前から校歌斉唱を続けてくださっています。この日の留学生(ベトナム、台湾、マレーシア)も大変感動していました。特別なことを準備しなくても、そのような日頃の小さな学校生活の物事を行うだけでも、十分有意義な交流活動となります。

12/8(金)町田市立町田第三小学校6年生

町田市立町田第三小学校にて。留学生のそれぞれの故郷では学校がいつ始まるか考えるクイズ。

同校への訪問は2005年度以来でした。同校では、オリンピック・パラリンピック教育の一環として、高学年を中心に世界の国々のことを学習しているそうで、今回ワークショップを実施させていただくことになりました。

当日は、この冬一番と言えるほどの寒さで、会場の体育館も深々と冷え込んでいました。ワークショップが始まるやいなや、子どもたちの集中は一気に活動に向けられました。エデュケーターや留学生に耳を傾け、あたたかくほほ笑みを浮かべ、うなずいたりあいづちをうったりしながら熱心に聴いてくれました。本当に上手な聴き方で、モンゴル、韓国、マレーシアの3人も楽しく活動することができたと、感激していました。

この日は、協働アクティビティとしてモンゴルの遊びを各クラスでチャレンジしました。特別な道具や能力を必要とせず、全員で手をつないで体を動かす、ごくシンプルな遊びです。しかし、この遊びには両隣の人のことはもちろん、手をつなぐ全員のことを気にかけて動くことや、互いに見合い、声をかけ合うことなど、「聴く」と「協働」を身をもって学べる深い意味のあるアクティビティです。

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子どもたちの選んだ国すべての学生と実際に出会えたら、なんと素敵なことでしょう。東京都では、オリンピック・パラリンピック教育の一環として、都内の全小中学校に学習対象の国が数カ国ずつ割り振られているそうです。その国々の出身者が来校してくれたら、どんなに世界を肌で感じられることでしょう。どちらも夢のような話です。現実的には極めて困難なことです。例え、もし、それが実現できたとしても、子どもたちの疑問・質問に対して、専門家のように正しく、小中学校教師のように易しく上手に答えたり教えたりできる人は、ほとんどいないのではないでしょうか。20年に渡り、述べ2000名以上の留学生と各校を訪問してきた経験から、草の根プロジェクトではそのように考えています。

「国・地域」ではなく、ひとりの「人」としての出会い。人として対等に誠意を持って向かい合うこと、そのなかで同じことや違うことや似ていることを受け止めること、そして、その多様性に気づき、真にわかろうとすること、一生懸命お互いに努力して協働すること。これらのことを成長・発達段階の子どもたちがリアルに体験できるような機会・場づくりが、草の根プロジェクトがお届けする留学生との国際理解/異文化理解のための活動です。

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