【報告】2/20町田市立山崎小学校で楽器を活用した世界の実物体験ワークショップを実施しました

この日、私たちが授業をしたのは町田市立山崎小学校。卒業まであと21日という6年生の子どもたち約60名です。この時期の6年生を対象に、同校で授業をするようになって今回で5回目です。

小学校6学年の音楽科の学習には、世界の音楽に親しむ単元があります。その発展として、総合的な学習の時間における国際理解教育という位置づけで、私たち草の根プロジェクトのワークショップ型の授業をご依頼いただいたのがはじまりです。以来、同校では6年生の年間学習計画に組み込まれ、その年の6年生の先生方とボランティア・コーディネーターさんの連携よって、この授業がリレーのように継続されています。今年度は、東京都オリンピック・パラリンピック教育一環として、これまでの学習活動と関連させるかたちで実施することになりました。

さて、この日のプログラムは、世界の実物体験ワークショップです。その素材に用いたのは、日本を含む世界各地のさまざまな楽器です。楽器といっても、草の根プロジェクトのコレクションは学校教育現場には見られないようなものです。どれも見慣れぬものばかりで、楽器とは思えないものもあります。そのような資料を選び、同校へ持っていきました。まるで小さな楽器博物館です。

「世界の楽器の音クイズ」 楽器の音だけを子どもたちに聴かせ、その後音の主がどの楽器か探し出します。写真は音を鳴らした楽器を布の下にエデュケーターが隠すところ。

音楽科におけるこの学習単元のねらいは、日本や世界のさまざまな楽器や音楽にふれることです。そのうえで、私たち草の根プロジェクトが行うこのワークショップで目指すことは、子どもたちが多様な楽器に出会い、自身の五感によってそれぞれの特徴を体感すること、さらに、そこからあらゆる物、事、そして人間の多様性に気づくことです。楽器のふるさとやそれを奏でる人々、楽器そのものの形も材質、音の出し方や音色。どこをとってみてもそれぞれです。同じ楽器でも違う、違うけれど楽器。楽器を使った体験アクティビティを通し、子どもたちも納得の笑顔でした。

「世界の楽器の音クイズ」 楽器を隠していた布を取り去り、子どもたちが楽器を探しているところ。探している時には楽器に触れてはいけません。そのため、子どもたちは自由に動き回りさまざまな角度から観察し、見つけたこと、気づいたことを周囲と共有しながら探し出そうとします。

ワークショップはいくつかのアクティビティで構成しますが、私たちはいつも各アクテビティのあとに必ず活動をふりかえり、次のアクテビティへ進むようにしています。ただ遊んでいるかのようにも思えるそのアクテビティから学ぶことは何か。ワークショップのファシリテーター(企画・実施・進行者)であるエデュケーターから子どもたちへ語り伝えます。この日も子どもたちに問いかけながらアクテビティのふりかえりを行いましたが、彼らから向けられるまなざしは興味にあふれ、強くまっすぐなものでした。エデュケーターの言葉のひとつひとつをかみしめるように深くうなづきながら、またあいづちを打ちながら、聴いてくれる子どもが何人もいました。

多様性について伝えたところで、さらに子どもたちに語ります。私たちが生きる世界は、多様であるからこそ豊かでおもしろく、いろいろなことが生み出されます。しかし、多様であるからこそ、理解に苦しんだり、誤解や摩擦が生じたり、困難な状況に置かれたりします。その両面に目をむけ、自分を基準とした見方や考え方(自文化中心主義)から離れ、客観的に物事を捉え、自己調整をはかることで、多様性の理解が始まります。それでは、どうしたらよいのでしょうか。ここが本ワークショップのねらいとして最も重要なところです。それは「聴く」そして「協働」です。ただ、この日の子どもたちは、すでにこの2つを実に上手に自然と実践していました。このふたつの力の意味や大切さを改めて考え、さらにその理解を深めてくれたように感じられました。

インドネシアの楽器「アンクルン 」 後半はアンクルン を使用した合奏の仕方を考え、実際に全員で合奏しました。

「聴く」ことと「協働」することは、人として大切なことだと頭ではわかっていても、なかなか容易にできることではありません。成熟した大人でも難しいものです。長く生きているからこそ、素直に実践できないこともあります。まして子どもたちは発達途上にあるので、困難なことだと考えられがちです。しかし、私たち草の根プロジェクトが大切にしている聴くことと協働は、子どもは子どもなりにしっかりできるのだいうことを、この日の子どもたちから教えられたように思います。子どもたちの持つ力を引き出して伸ばすことは、子どもたちの学びと育ちを支える私たち大人の意識や働きかけ次第です。この日、改めて強く深く考えました。