この日、私たちが授業をしたのは町田市立山崎小学校。卒業まであ
小学校6学年の音楽科の学習には、世界の音楽に親しむ単元があ
さて、この日のプログラムは、世界の実物体験ワークショップです。その素材に用いたのは、日本を含む世界各地のさまざまな楽器です。楽器といっても、草の根プロジェクトのコレクションは学校教育現場には見られないようなものです。どれも見慣れぬものばかりで、楽器とは思えないものもあります。そのような資料を選び、同校へ持っていきました。まるで小さな楽器博物館です。
音楽科におけるこの学習単元のねらいは、日本や世界のさまざまな楽器や音楽にふれることです。そのうえで、私たち草の根プロジェクトが行うこのワークショップで目指すことは、子どもたちが多様な楽器に出会い、自身の五感によってそれぞれの特徴を体感すること、さらに、そこからあらゆる物、事、そして人間の多様性に気づくことです。楽器のふるさとやそれを奏でる人々、楽器そのものの形も材質、音の出し方や音色。どこをとってみてもそれぞれです。同じ楽器でも違う、違うけれど楽器。楽器を使った体験アクティビティを通し、子どもたちも納得の笑顔でした。
ワークショップはいくつかのアクティビティで構成しますが、私たちはいつも各アクテビティのあとに必ず活動をふりかえり、次のアクテビティへ進むようにしています。ただ遊んでいるかのようにも思えるそのアクテビティから学ぶことは何か。ワークショップのファシリテーター(企画・実施・進行者)であるエデュケーターから子どもたちへ語り伝えます。この日も子どもたちに問いかけながらアクテビティのふりかえりを行いましたが、彼らから向けられるまなざしは興味にあふれ、強くまっすぐなものでした。エデュケーターの言葉のひとつひとつをかみしめるように深くうなづきながら、またあいづちを打ちながら、聴いてくれる子どもが何人もいました。
多様性について伝えたところで、さらに子どもたちに語ります。私たちが生きる世界は、多様であるからこそ豊かでおもしろく、いろいろなことが生み出されます。しかし、多様であるからこそ、理解に苦しんだり、誤解や摩擦が生じたり、困難な状況に置かれたりします。その両面に目をむけ、自分を基準とした見方や考え方(自文化中心主義)から離れ、客観的に物事を捉え、自己調整をはかることで、多様性の理解が始まります。それでは、どうしたらよいのでしょうか。ここが本ワークショップのねらいとして最も重要なところです。それは「聴く」そして「協働」です。ただ、この日の子どもたちは、すでにこの2つを実に上手に自然と実践していました。このふたつの力の意味や大切さを改めて考え、さらにその理解を深めてくれたように感じられました。
「聴く」ことと「協働」することは、人として大切なことだと頭ではわかっていても、なかなか容易にできることではありません。成熟した大人でも難しいものです。長く生きているからこそ、素直に実践できないこともあります。まして子どもたちは発達途上にあるので、困難なことだと考えられがちです。しかし、私たち草の根プロジェクトが大切にしている聴くことと協働は、子どもは子どもなりにしっかりできるのだいうことを、この日の子どもたちから教えられたように思います。子どもたちの持つ力を引き出して伸ばすことは、子どもたちの学びと育ちを支える私たち大人の意識や働きかけ次第です。この日、改めて強く深く考えました。