学年末の3学期、日本の多くの小学校では2学年の国語科(光村図書)で「スーホの白い馬」が学習され始めます。この物語はモンゴルで語り継がれる民話ですが、日本でも何十年にも渡って親しまれています。そのため「モンゴルと言えば『スーホの白い馬』!」という方もたくさんいらっしゃいます。
今回は、その「スーホの白い馬」の学習の入口として、子どもたちが物語の舞台であるモンゴルについて興味を持ち、物語を読み進めていく足がかりとなるようにということで世界の実物体験ワークショップを行いました。その対象は相模原市立田名小学校の2年生(4学級・約120名)の子どもたちです。ご依頼をいただいた学級担任4名の先生方と事前に活動に適した会場や環境づくり、時間設定、活動のねらいや内容などを綿密に相談しました。この日は、学年を2学級にわけ、それぞれ1時間という時間割を組んで、計2回・2時間の授業を実施しました。
寒さも吹き飛ばすような 子どもたちの元気なあいさつで授業が始まりました。前半は 2名のエデュケーターによる全体授業です。しかし、草の根プロジェクトの授業は、講師の話を子どもが静かに聞くようなレクチャー型ではありません。私たちが行うのは、子どもたちとのキャッチボールがあって実現する参加型学習「ワークショップ」です。どの子もみんながわかって楽しめることを目指し、私たちは「やさしい日本語」で語りかけています。 私たちのワークショップでいつも大好評なのが、すべての子どもが平等に参加できるクイズです。「自分の考えを表明する」ことは、一人の人間、地球市民として大切なことです。その楽しさや面白さを子どもたちに実感してほしいと私たちは考えています。この日もみんなが笑顔でいきいきと参加していました。ちなみに、この日のクイズやお話の多くは、これまでに草の根プロジェクトで活動したモンゴル人学生たちの協力によって蓄積されたチエ・ワザです。その際、大切にしているのは視覚的なリソースです。写真やイラストを使った映像資料、そして、何と言っても本プロジェクトが誇る「ホンモノ」です!本物の馬頭琴や伝統の服・帽子、 シャガイという羊のくるぶしの骨(占いやすごろくやおはじきのような遊びに使用されます)など実物資料を見せると、子どもたちからは驚きや歓びの声が湧き起こりました。
後半は、その馬頭琴の観察・音だし体験、シャガイの占いを各学級で交互に楽しみました 。本プロジェクトが持つ世界の実物資料は、すべてハンズ・オン教材です。間近でじっくりと観察し、自分の手で触れ、実際に体験するからこそ、馬頭琴やシャガイの大きさや形、材料や質感、そして音色などがわかります。そこから、モンゴルの人々の暮らしや思いを想像したり、物語の少年や白馬の気持ちに思いをはせたりするかもしれませんし、物語の場面や状況を深く読み取っていくヒントを発見する子どももいるかもしれません。自分の五感で感じる体験こそ、人の学びの原点だと考えています。また、ハンズ・オン展示資料を活用したこのような学習活動は、多様な子どもたちの知的欲求や学び方に応え、それぞれに豊かな感情体験を生み出し、アクティブな思考を促します。 この日の子どもたちは、誰一人ためらうことなく実物体験を楽しんでいました。「手を出さずに見ているだけ」というような子どもが一人もいませんでした。自分とは違う、あるいは未知の人・もの・ことに出会ったとき、このように興味を持って、自ら触れて知ろうとすることは、他者理解・相互理解への第一歩です。その感性はとても素晴らしいものだと思います。
同校ではまだ始まったばかりという国語科「スーホの白い馬」ですが、今回のワークショップで得られたさまざまな体験や気づきが今後の学習に活かされたら大変嬉しく思います。そして、子どもたちのことばと思考の育ちにつながっていくこと、さらに、自分も含めた仲間の多様性とその豊かさに気づき、健やかに育ってくれることを願います。
★1月中旬~3月上旬は 馬頭琴をはじめとしたモンゴル理解につながる実物資料の貸出や実物資料を活用したワークショップのご依頼を例年多くいただきます。ご希望の場合はお早めに(できれば前年度末から年度初め、遅くても秋頃まで)お問合せください。 ご依頼が重なり、ご希望にお応えできないこともあります。ご了承ください。
“【報告】2019年1月17(日)(木)相模原市立田名小学校で「スーホの白い馬×モンゴル理解」ワークショップを実施しました” への1件の返信