11月30日(木)に相模原市立相模台小学校の5年生(3クラス)を対象に、世界の実物体験ワークショッププログラム(以下実物体験WS)を実施しました。エデュケーター2名と学生スタッフ2名の4名で訪問し、2〜4時間目にかけて45分のワークショップを1クラス(約30名)ずつ3回に分けて実施しました。
実物体験WSは、草の根プロジェクトが所有する世界各国の実物資料を体験的に活用するのが大きな特徴です。ねらいとするところは二つあります。一つはワークショップを通して学習者自身が国内外を問わず文化が多様であることを認識するということです。もう一つは、実物資料を用いたアクティビティをグループで取り組むことを通じて、異なる背景を持つ人々と協働する上で何が大切なのか、共に考えるということです。
今回のワークショップは、「世界のコマ」を使用し以下のような構成で実施しました。
- イントロダクション
導入として大型液晶モニターでスライドを見ながらなぜこのワークショップを行うのか問いかけを交えながら紹介します。
「いま世界には何人の人がいるんだろう?」
「世界中の人が全員で手をつないだらどれくらいの大きさになるだろう?」
「たくさんの人がいるけれど、みんなに共通していることは?」
「食べること、学ぶこと・働くこと、いろいろな習慣・マナー等々これらは『文化』という」
「『文化』をもう少し分かりやすく言うとそれぞれが『当たり前』にしていること、思っていること」
「世界にはみんなの『当たり前』と違う『当たり前』がある。」
「自分とはちがう『当たり前』をもっている人と一緒に何かするとき、どんなことに気をつければいいんだろう?」
- アクティビティ①「触察伝言ゲーム」
- クラスを3〜4名の小グループに分け、全員で輪をつくり座ります。
- グループ内の1名が「発見係」、ほかの2〜3名が「触察係」になります。
- 発見係は輪から外れ、触察係の前に座ります。
- 全員が輪の外側を向きアイマスクを着用します。
- 各グループの触察係にコマを1つ渡します。触察係は一人ずつコマを触察します。
- 触察係が全員触察を終えたら、コマを輪の中心にランダムに並べます。
- 触察係は輪の外を向いたまま、全員がアイマスクを外します。そして、触察係は自分たちが触察したコマがどんなものか発見係に伝えます。
- 発見係は、触察係から聞いた情報をもとに、輪の中心に並べられたコマを観察して自分のグループが触察したコマを探し出します。
- 発見係に選んだコマがどれか尋ね、実際に触察したものかどうか確認します。*触察係はここではじめてコマを見ることができます。
- 発見係が正しいコマを見つけられたグループも、そうでないグループもなぜそうした結果になったのかグループ内で振り返ります。
- 各グループの振り返りの内容をシェアします。
- アクティビティ②「コマの回し方を考えて回そう」
- 各グループにそれぞれが触察したコマとそれを回すための道具を配ります。
- グループのメンバーで協力して、配られたコマの回し方を考えて回します。
- 各グループのコマの回し方を実演しながら紹介します。
- 振り返り
イントロダクションと各アクティビティや、グループごとの振り返りの内容などを全員で振り返ります。最後にこれから多様化していく世界でより良く生きる一つのヒントとして、「自分の当たり前はどこでも通用するものではない」こと、このことは「外国に行ったときや、外国の人に会った時だけでなく、今身近にいる人に対しても同じように心に留めよう」、ということを伝えます。
3つのクラスともワークショップの最初から最後まで集中して話を聞き、積極的にアクティビティに取り組んでくれました。特にアクティビティ①「触察伝言ゲーム」の振り返りでは、情報を伝える際のさまざまな工夫や反省を教えてくれました。また、アクティビティ②「コマの回し方を考えて回そう」でも、短い時間ながら真剣に考え、回し方を実演する時には、上の写真に見られるようにクラス全員の視線がコマに集中している様子が印象的でした。子どもたちのアンケートからは、「触察伝言ゲームで協力することができて楽しかった」、「外国にもコマがあることを初めて知った」などといった声が見られ、非常に刺激的な体験であったことが見受けられました。
このように、実物体験WSは、実物資料に関する知識を紹介するものではありません。多数の実物資料をさまざまな方法でじっくり観察・触察して比較したり体験することで、文化の多様性を学習者自身が認識できる学びの場であり、実物資料の特徴を活かし、学習者同士の協働的な関係性をつくるアクティビティを実現することによって、「これから」ではなく、まさに「今」必要とされる多様な人々との共生につながるヒントを学ぶ場を提供するものであると考えています。
世界と自分とのつながりを考え、子どもたちにとっても身近なコマを触察・観察して比較し、回し方を考えるこうしたワークショップは、子どもたちの興味関心を刺激し、異なる文化と自分との関わりに意識を向けるきっかけに相応しいのではないでしょうか。このワークショップは他の学校でも実施可能です。関心をお持ちの方はどうぞお問い合わせください。