おうちでめぐろう!世界遺産

Withコロナ時代の世界遺産

コロナ禍は、世界中の移動を半強制的に停止させました。私たちも、これまでのように条件さえ許せば気軽に観光旅行に出かけることは難しくなりましたし、ましてや実際に世界遺産を訪れることは、さらにハードルが高くなってきました。

その一方で、「密」を避け、テレワークやオンラインミーティングが身近なものとなりました。私たちの大学も例外ではなく、2020年、2021年とオンライン授業が実施されました。コロナの副産物として、身の回りのネット環境が向上し、自宅にいながらにしてさまざまな活動ができるようになってきました。

たとえば、博物館の世界では、バーチャルミュージアム、デジタルミュージアムなどの取り組みが加速してきましたし、AR(拡張現実)技術を利用した展示室見学体験ができるところもあらわれました。また、オンライン上で学芸員が展示説明をしたり、収蔵品検索の充実を図る館も増えてきました。観光面でも、オンラインツアーの提供が拡大しています。

今回、私たちは、ストリートビューの機能を利用して、自宅にいながらにして世界中の世界遺産を見て回れるのではないかと考えてこのようなウェブサイトを作りましたが、この試みもコロナ禍への対応策の一つと捉えることもできます。

ところで、前のページで世界遺産の抱える課題の一つとして、資源の過剰利用、すなわち「オーバーユース」の問題に触れました。世界遺産に登録されることで観光客が大挙して訪れるようになって観光化に拍車がかかり、著しく観光開発が進んでしまった結果、環境悪化が深刻化する事態も指摘しました。

しかし、コロナ禍によって、世界遺産を訪れる観光客が激減しています。奇しくも、コロナ禍が世界遺産のオーバーユースを抑制することになったのです。

世界遺産にやってくる観光客に依存していた地域はどこも苦境に陥っています。経済的な停滞に対する対策はもちろん必要ですが、その一方で、これをきっかけに、観光に依存する地域経済のあり方を見直すことにもなるのではないでしょうか。

コロナ禍が収まったとしても、決してこれまでと同じような社会は戻ってきません。文字どおり「Withコロナ」の世界をどのように生きていくかはこれからの大きな課題ですが、それは世界遺産も例外ではありません。

単に世界遺産に登録されればいい、そうすれば観光客もたくさんやってきて地域は潤う、といった短絡的な価値観は、「Beforeコロナ」の遺物として過去のものにしていく必要があるでしょう。一方で、世界遺産を訪れる私たちについても、世界遺産だから話の種に行ってみようとか、遺産の価値に興味をもつことなく土産物屋とレストランだけを訪れて行った気になっているような観光のあり方があったとすれば、それは考え直していかなくてはなりません。

世界遺産の本来的な意義とは何か、それを地域で支えるとはどういうことなのか、外部の人々は世界遺産とどのような関わり方をすればいいのか、多くの人々があらためて考えていく時期に立ちいたっているのではないでしょうか。(三嶽)