世界遺産の数は、1972年の世界遺産条約の採択から一貫して増え続け、2014年に1,000件を超えるにいたりました。その勢いは止まらず、各国が競うように世界遺産の登録を目指しています。
しかし、世界遺産の数が増え続けることに果たしてどのような意味があるのでしょうか。そもそもそれはいいことなのでしょうか。
確かに、世界遺産に登録されることによって、世界から注目されるようになり、世界が守るべき「人類共通の財産」という認識が広まるというメリットが考えられます。また、その価値が広く知られるようになることによって、保護への原動力になっていくかもしれません。さらに、興味を持って実際に訪れる人が増えることで、その地域の観光需要が掘り起こされ、それにともなう経済的な効果も大きなものになるでしょう。
しかし、そのようなメリットや素晴らしい点だけが強調されることで、その背後に潜む問題点が見えなくなってしまうということはないでしょうか。
たとえば、その経済効果ばかりに目がくらんでしまって、本来の世界遺産の価値はお構いなしに観光開発に邁進して、結果としてその世界遺産の価値が損なわれてしまったとすれば、それでは本末転倒です。
ここでは、このような世界遺産の「負の側面」についても目を配りながら、これからの世界遺産について考えていきます。(三嶽)